「ぶっ殺すぞ!」悪質クレーマーを一発で撃退する「最強のひと言」【新法対応・弁護士が教える】細井大輔(ほそい・だいすけ)/弁護士。2007年弁護士登録。日本で最も歴史のある渉外法律事務所・ブレークモア法律事務所にて企業法務を中心に取り組み、2016年に大阪・北浜にて「かける法律事務所」を設立(現在法人化)。企業法務・コンプライアンス・不祥事対応・知的財産・M&A・労務人事問題など幅広い分野を手がけ、企業の持続的成長を法務面から支援。コンプライアンス研修・ハラスメント予防研修の講師としての登壇実績も多数。

細井弁護士:今回のケースでは、以下の犯罪に該当する可能性が高いと考えられます。

脅迫罪(刑法222条):「ぶっ殺すぞ」といった、生命・身体に危害を加える旨の発言
威力業務妨害罪(刑法234条):受付のアクリル板をたたく、大声で怒鳴るなどにより業務の遂行を妨げる行為
不退去罪(刑法130条):退去を求められたにもかかわらず、正当な理由なく居座る行為

 さらに、佐藤さんのように「顔をたたくまね」をする行為についても、態様によっては暴行罪(刑法208条)が成立する可能性があります。

 重要なのは、これらの行為はもはや単なる「クレーム」ではなく、刑事責任を問われ得る「違法行為」であるという点です。

「記録させていただきます」の宣言は
一発撃退の効果がある

――現場ですぐできる、「一発撃退」の方法があったらぜひ教えてください。

細井弁護士:カスハラ対応で重要なのは、現場任せにせず、あらかじめ“毅然とした対応”ができる体制を整えておくことです。厚生労働省の指針でも、事業主には対応方針の明確化や対処方法の整備が求められています。

 警告文や対応手順をマニュアル化しておくことで、現場でも迷わず行動できるようになります。具体的には、以下のような対応を整理しておくと有効です。

・「警告」を定型文化する
「その言動は業務妨害に当たります。これ以上続けられる場合は、警察に通報し、診療をお断りします」など、カスハラに対する警告文を決めておき、すぐに伝えられるようにしておきます。

•即座に記録(録音・録画)
スマホやボイスレコーダー、防犯カメラの映像を確保します。「記録させていただきます」と宣言するだけでも、抑止力として一発撃退の効果がありますし、後の法的対応においても重要な証拠となります。

•複数対応・エスカレーション
受付にいる方など、特定の方だけに対応を背負わせず、必ず警備員など複数人で対応し、安全面の観点から他の方々から見えない場所へ誘導(または本人が拒否するなら状況に応じて警察への通報を検討します)します。

•外部機関との連携
暴言・威迫・暴力など悪質なケースでは、ためらわず警察への通報を検討すべきです。また、対応に迷う場合や継続的なトラブルについては、顧問弁護士などの外部専門家と連携し、組織として対応できる体制を整えておくことが重要です。

•「カスハラを許さない」姿勢の明確化
院内掲示やホームページで「迷惑行為はお断りする」旨を明示することや、利用規約・契約書等にカスハラ禁止条項を設けることも有効です。事前の発信は抑止力となるだけでなく、実際の対応場面における根拠にもなります。