こうした経営課題に対し、アシックスはカテゴリー制の導入を決断する。

 カテゴリー制では、各カテゴリーの責任者が商品開発や販売、マーケティングなどの全ての権限と責任を持つ。アシックスは、製品群をパフォーマンスランニング、コアパフォーマンススポーツ、アパレル・エクィップメント、スポーツスタイル、そしてオニツカタイガーの5つに分類し、それぞれのカテゴリーがPDCAを回しながら収益や利益を追求する体制に改めた。

 そうした取り組みの結果、それぞれのカテゴリーの売上高は、パフォーマンスランニングで19年12月期の1701億円から25年12月期には3635億円に、コアパフォーマンススポーツで417億円から860億円、アパレル・エクィップメントでは392億円から420億円、スポーツスタイルで342億円から1413億円、オニツカタイガーでは455億円から1365億円へと、それぞれ大きく増加することとなった。

 また、コスト管理も徹底した。20年からは各カテゴリーのコストを主要費目別に管理するコストオーナーを設定し、グローバルで横串管理を行う体制を導入。販管費率の引き下げを進めてきた。

 こうした取り組みの結果、25年12月期における売上高営業利益率(=営業利益÷売上高)は約18%と、19年12月期の約3%から約15ポイントも増加したのである。

 アシックスが18年ごろから取り組み始めた経営改革が、先に述べたような業績と株式市場からの評価につながったといえるが、アシックスの業績拡大の背景には、経営改革のPDCAを回すKPIマネジメントがあったことも見逃せない。

 そこで今回は、アシックスのKPIマネジメントと経営改革との関係性、経営改革においてKPIマネジメントが果たした役割、そしてKPIから見えてくるアシックスが抱える経営課題について解説することにしよう。

KPIマネジメントが
なぜ重要なのか?

 アシックスのKPIマネジメントについて見ていく前に、まずはKPIの持つ意味について振り返っておこう。

 KPIとは、英語の「Key Performance Indicator」の頭文字をとった略称で、重要業績評価指標とも呼ばれる。

 このKPIは、会社などの組織としての目標達成水準を測るための指標だ。会社の最終成果を測定する指標をKGI(Key Goal Indicator)と呼ぶこともあるが、KPIとKGIの区別は厳密なものではないから、ここでは組織としての業績目標(数値目標)を示す指標を総称してKPIと呼ぶことにしよう。

 KPIは、その会社にとって重要な業績、成果の達成度合いを見るためのものだ。したがって、KPIが目標水準をクリアしていれば、その会社は望ましい方向に向かっているといえるし、もし達成できていなければ、なぜそうなってしまったのか、その原因を追及していくことで業績を改善していくことができる。