言ってみれば、KPIは会社にとっての健康診断の検査数値のようなものだ。人間の場合、検査数値に異常が見つかれば、その原因を突き止め、それを改善するための薬が処方されたり、生活習慣の改善が求められたりする。

 会社の場合もそれと同じで、KPIの目標達成状況が悪ければ、その原因を改善することでビジネスがうまく回るように導くことができるわけだ。

 つまり、KPIは、会社をあるべき姿へと向かわせるための羅針盤の働きをするものだといえる。

KPIが機能するために
大切なこと

 KPIを羅針盤として活用するためには、当然のことながら会社が目指すゴールと、向かうべき方向性(道筋)が明確に示されていなければならない。

 ゴールが示されていなければ、会社が向かうべき方向性がわからないし、方向性がわからなければ、どのようなKPIを設定し、その目標水準をどのレベルに設定するのかがわからないからだ。ここで、ゴールとは会社のビジョン(経営ビジョン)を、向かうべき方向性とは会社の経営方針を意味する。

 また、次の図に示すように、会社のビジョン、経営方針とKPIは整合していなければならない。いくら明確な経営方針が掲げられていても、それに合わせたKPIが設定されていなければ、ビジネスを望ましい方向へと導くことはできないのだ。

図表:会社のビジョン、経営方針とKPI筆者作成
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 ここまでで、アシックスの経営改革の概要と、KPIマネジメントの重要性、そしてビジョン、経営方針とKPIの関係について述べてきた。

 後編では、アシックスの中期経営計画において経営方針がどうKPIに落とし込まれているか、アシックスがROA(総資産利益率)をKPIとしている理由、そしてROAツリーから見えてくるアシックスの経営課題について解説することにしよう。

矢部謙介(やべ・けんすけ)/中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授。ローランド・ベルガー勤務などを経て現職。マックスバリュ東海社外取締役も務める。X(@ybknsk)にて、決算書が読めるようになる参加型コンテンツ「会計思考力入門ゼミ」を配信中。著書に『決算書の比較図鑑『武器としての会計思考力』『武器としての会計ファイナンス』『粉飾&黒字倒産を読む』(以上、日本実業出版社)『決算書×ビジネスモデル大全』(東洋経済新報社)など。
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