成功していないから組織も施策もコロコロ変わっているのだ。こうした過去の動きや実績も含め、本邦金融機関が、富裕層ビジネスを長期的・永続的に行う意志と計画があるのか、富裕層はしかと見定めているのだ。こうした関係性をよく理解したうえで、組織やビジネスモデルを構築する必要がある。

時間を最優先する富裕層には
“長い説明”は最大のリスク

 富裕層の多くは、開示したくないのに、家族構成や資産内容や取引金融機関などを根掘り葉掘り聞かれ、担当者がコロコロ変わるたびに、挨拶を受けたりする時間そのものを勿体なく思っていたりする。

 また、営業担当者の金融知識やマーケット感覚がなかったりして、面談時間が長くなったり、話がかみ合わず時間を浪費することも忌み嫌うものだ。

 ルールとはいえ、金融商品購入にあたり、ディスクレーマーやマーケットリスクなどの説明が長いことも避けられる理由の1つだ。結果的に、銀行よりも要領を得た大手証券会社や外資系金融機関の営業担当者やIFAが好まれることになる。

 これは先に挙げた「人と同じはいや」「面倒くさがり」という特徴にもリンクする。さっさと本題に入れない、商品や顧客の理解が甘く説明がたどたどしい、挙げ句の果てにメリットが見えないありきたりな商品を売りつけられるといった状況を富裕層は強く嫌う。

 無駄なことに時間を取られるほうが「リスク」なのだ。

銀行をネット証券が
出し抜く可能性も

 富裕層の特徴として、もう1つ忘れてならないのは、金融リテラシーが非常に高いことだ。

 実際に、豊富な投資経験があり、株式や不動産、FXなど各々に成功体験を持つ得意分野や思い入れのある分野があるものだ。銀行や証券会社の担当者よりも金融知識も投資経験も豊富だったりするのだ。

 この先も、(1)そもそも富裕層は開示しない、(2)コロコロ変わるのは論外、(3)時間泥棒が大嫌い、という富裕層の特性を理解した上で富裕層ビジネスを構築し対応しない限り、富裕層の心を掴むことは難しいだろう。

 これは、無論、金融機関だけでなく、不動産会社、ホテルや飲食店など富裕層ビジネスに関わる全ての事業者にもいえることだ。

 いずれにせよ、このままでは富裕層ビジネスにおいても、SBI証券や楽天証券、マネックス証券などネット証券や異業種のネット銀行などが出し抜く可能性がある。

 必要以上にあれこれ開示する必要がなく、担当者がいないのでコロコロ変わることなく、なんといっても24時間365日好きな時にアクセスできる、「富裕層好み」の仕様だからだ。

 大手銀行は富裕層ビジネスをこれ以上続けるべきか、一度立ち止まってみる必要があるのではないか。すべての金融機関が富裕層を相手に収益を上げられるような簡単なマーケットではない。競合他社は証券会社などを含め、数多ひしめいている。

 特に、20億円以上の金融純資産をもつような超富裕層は、資産運用だけでなく相続・事業承継などにおいても、担当者・商品・サービスに対する要求水準も相応に高い。商品ラインナップ、人材育成、コストの観点から、対応できない場合も多くなる。