地方企業の人事担当者が語る、“地元”のメリットと学生の就活事情

企業が27卒生の内定(内々定)を出す時期になっている。ダイヤモンド・ヒューマンリソース社の調査(*1)によれば、今春、社会に出た26卒生の「内定辞退」は、25卒生に比べて、「増えた」企業が「減った」企業を上回った。また、Uターン就職の意識にも変化が見られるようだ。昨今、地方企業の新卒採用はどういう状況になっているのか? 地方在住の学生の就職活動は? 体験型のインターンシップを10年以上前から積極的に行い、就活生に寄り添う採用活動を続けるトヨタカローラ山形の横澤優介さん(人財開発室チーフ/採用・教育担当)に、「HRオンライン」が山形市の本社で話を聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、撮影/菅沢健治)

*1 株式会社ダイヤモンド・ヒューマンリソース「2026卒 採用・就職活動の総括」

コロナ禍を挟んで変わった、採用&就職活動

 いまから6年前――2020年の春は、世界中が新型コロナウイルスの感染防止にさまざまな策を講じていた。感染症の影響は、「学び方」「働き方」にもおよび、企業の採用活動(学生の就職活動)にも変化を与えたようだ。東北地方の山形県に本社を置くトヨタカローラ山形(*2)で、新卒者の採用・教育を行う横澤さん(人財開発室チーフ)に、まず、「コロナ禍前後」の採用状況を振り返ってもらった。

*2 トヨタカローラ山形株式会社(本社:山形市南一番町1-15、代表取締役社長:鈴木肇子、創立:1962年10月22日)

横澤 コロナ禍に伴うさまざまな変化で、学生の就職活動、企業の採用活動はガラリと変わりました。そのひとつに「合同説明会」の形式があります。「合同説明会」がオンラインになり、対面でのリアル開催だったら、「(同じ空間にある)別の企業のブースにもちょっと寄っていこう」といった学生の動きがあったのですが、オンラインだと、気になる企業の時間だけに参加する学生が多いようです。この変化により、「展望化(視野を広げること)」と「焦点化(絞って検討すること)」のバランスが変わったと思います。焦点化のみの就職活動は選考落選の機会でしか視野が広がらず、簡単に言えば、一か八かになってしまいます。私たちのような中小企業は、合同説明会で社名と事業内容を知ってもらうことからのスタートなので、落選を機会に再出発する学生からすると、より「ゼロからの就職活動」の感じが強くなってしまうこともハードルを高くしていると思います。

 ここ数年、合同説明会は対面でのリアル開催に戻りつつありますが、学生の参加者は年々減っています。また、コロナの影響にかかわらず、SNSやAIの普及によって、学生がスマートフォンでさまざまな情報を簡単に受け取れるようになったことも、企業側からすると大きな変化です。アフターコロナのいま、臨機応変に学生に向き合っていく必要に迫られています。

 そうしたなか、首都圏・関西圏の企業同様、地方の企業も、採用活動の一環としての「インターンシップ」が欠かせないものになっているという。

横澤 学生にとって、志望企業のインターンシップに参加できるかどうかがとても重要になっていますね。インターンシップに参加できないと、その企業に就職できないのでは?と、まるで、インターンシップ自体を入社試験のようにとらえている学生も多いです。

 採用市場での全体的な傾向として、インターンシップは一日開催の会社説明会的なものが多く、コロナ禍をきっかけに、オンラインで行う企業が増え、タイパ・コスパを重視する学生は、一日で数社参加する方もいると思います。

 小社は、「ふれあい塾(*3)」という体験型のインターンシップを年間通じて行っているのですが、学生の参加は大学3年生の夏に集中しています。

*3 トヨタカローラ山形の「ふれあい塾」のWEBページには、就活生向けのさまざまなコンテンツが用意されている。

 横澤さん自身も、就活生のときに、トヨタカローラ山形のインターンシップを経験している。そのときの貴重な体験が就職に結びついたが、横澤さんは、現在の学生の「インターンシップ」に対する姿勢に思うことがある。

横澤 これは私の考えですが、「展望化」と「焦点化」を、体験を通して繰り返していくことで自己理解が深まると思っています。そのため、インターンシップで実務に近い体験をして、どういう仕事が自分に向いているかを把握することが大切です。現在、学生がインターンシップに参加する目的は、「興味のある企業を深く知るため」(焦点化重視)というものが多くなっているようです。

 インターンシップで、職種や企業を考えていくというよりも、希望の進路を決めたうえで参加していく。結果的に、「とにかく、内定をもらおう」「有名企業に入ろう」という目的にいつの間にかすり替わり、入社してから、「こんなはずじゃなかった……」という状況になりかねません。インターンシップの参加目的が焦点化重視となると、このリスクが増えてしまう懸念があります。