不採算事業や過剰な多角化を整理し、強みであるランニング領域およびオニツカタイガーへと経営資源を集中させました。D2C(直販)モデルへの転換を進め、利益率の改善にも成功しています。
PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)の観点で見れば、「低収益事業の整理」と「成長領域への投資」を徹底した典型的な構造改革と整理できます。
PPMは、縦軸に市場成長率、横軸に相対マーケットシェアを置いたマトリックス上に自社事業を配置して、各事業の特徴と事業のバランスを把握するフレームワークです。各事業の円の大きさは売上高を表します。
出典:グロービス学び放題「プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)」拡大画像表示
ここでは、横軸として、本来の「相対マーケットシェア」の代わりに「推定営業利益率(収益力の代替指標)」、縦軸として「前年比売上高成長率」を用いた簡易的なPPMで表現してみましょう。アシックスのポートフォリオの変化を眺めると、その鮮やかさに驚きます。
例えば、2018年当時、主力の「ランニングシューズ事業」はマイナス成長に陥り、かつての「金のなる木」が機能不全を起こした状態でした。一方、「オニツカタイガー」は423億円(全社売上高の約11%)の規模で急成長はしていたものの、まだ「問題児」の域を出ていませんでした。
出典:アシックス決算開示資料(2018年度および2025年度)を参考に作成※本図は簡易的な代替PPM。横軸は本来の「相対マーケットシェア」の代わりに推定営業利益率(収益力の代替指標)、 縦軸は前年比売上高成長率を用いた
※推定営業利益率はアシックス決算開示資料に基づく参考値。2018年の利益率は非公開のため全社水準から筆者推定
※縦軸の象限の分岐点は「0%(市場平均)」ではなく「+10%」に設定。アシックスの全カテゴリーが既に高成長段階にあり、同社内での相対的な成長力を比較するため
拡大画像表示
それが、2025年度はどうでしょう。
かつての「負け犬」であった不採算事業は一掃され、スポーツウェアをファッションとして着こなす「スポーツスタイル」は前期比43.6%増で売上高1413億円、「オニツカタイガー」は前期比43.0%増で売上高1000億円超(利益率は37%超)と、いずれも「花形(Star)」へと昇格。コアランナーが記録向上を目指す「パフォーマンスランニング」は売上高3635億円(前期比11.2%増)となり、「金のなる木」としても「花形」としても十分戦える安定基盤を提供しています。
しかし、この整理だけで営業利益率がここまで上昇するとは考えにくいのも事実です。
では、一体、何が同社の収益性を大きく変えるきっかけとなったのでしょうか?







