UAEは単なる「産油国」ではない
UAEの離脱に至る決断の背景を理解するには、同国の経済構造に目を向ける必要がある。UAEは7つの首長国から成る連邦国家であり、その中でもアブダビとドバイが経済の中核を担う。最大の経済規模を持つアブダビはUAE全体のGDPの約6割を占め、政治・外交の中心であると同時に豊富な石油資源を有する。次いで大きいドバイはGDPの25%前後を占め、金融、物流、観光、不動産、航空など非石油部門を軸に急速に成長してきた。
非石油部門の成長は、経済構造にも明確に反映されている。2012年時点でUAEのGDPの36.8%を占めていた鉱業部門の比率は、2024年には22.2%まで低下した。金融・保険や運輸における国際的なハブとしての発展に加え、エネルギーコストの低さを強みとした製造業も成長しており、経済の裾野は着実に広がっている。
この多角化において中核的な役割を担ってきたのが、アブダビが抱える世界最大級の政府系ファンドである。石油収入を原資として、世界の株式・債券、不動産、インフラといった伝統的な投資対象に加え、半導体、AI、再生可能エネルギー、データセンターなど成長分野まで幅広く資金を振り向けている。UAEはいまや、産油国であると同時に、投資大国としての顔を併せ持つに至っている。
この投資大国としての性格は、原油価格に対するUAEの姿勢にも影響を与える。過度な原油価格の上昇は、必ずしも歓迎できるものではない。原油高は直接的な輸出収入を押し上げる半面、グローバルなインフレ加速や金利上昇により、政府系ファンドが運用する莫大な国際投資資産の評価額を毀損するリスクを孕む。むしろ、原油価格が適度な水準に落ち着き、世界経済が安定的に成長する方が、投資リターンの拡大を通じて国富の増大に寄与する構造となっている。
対照的に、OPECプラスの生産調整を主導してきたサウジアラビアは異なる事情を抱える。Vision 2030のもとでNEOMをはじめとする巨大開発を進めており、これを支える財政支出には高水準の原油価格が欠かせない。IMF「中東・中央アジア地域経済見通し」(2025年5月)によれば、財政均衡油価はサウジアラビアで2025年92.3ドル、2026年86.6ドルと推計される一方、UAEは2025年50.4ドル、2026年45.2ドルにとどまる。
UAEが原油価格の下落をより許容し、生産数量の自由度を重視する立場にあるのに対し、サウジアラビアは依然として生産抑制と高価格維持を志向せざるを得ない。両国の経済構造の違いも、今回のUAE離脱の底流にあったといえる。








