日本は実は最大級の受益者
日本のような消費国にとって、OPECプラス体制の弱体化は概して恩恵となる。OPECプラスによる価格支配体制の構造的課題は、本来低コストで生産可能なOPEC産油国が生産を抑制し、その需給ギャップを高コストの産油国が埋めることで、世界全体の原油生産コストが押し上げられている点にある。結果として、消費国は本来不要なコスト負担を強いられている。生産コストの低いUAEが自由に増産できる立場へ移行することは、世界全体の原油生産コスト低下につながる。
日本は、原油市場における価格形成の効率化という側面以上に、UAEの生産自由度の拡大から大きな恩恵を受ける立場にある。UAEは日本にとってサウジアラビアと並ぶ最大級の原油輸入元であり、2025年には月次ベースでサウジアラビアを上回り首位となる時期もあった。さらに、日本とUAEの関係は単なる原油の売買にとどまらない。日本企業はアブダビの主要油田に長年権益を保有しており、UAEが進める生産能力拡張にも共同事業者として参画している。
アブダビ国営石油会社(ADNOC)は、2027年までに原油生産能力を日量500万バレルへ引き上げる計画を掲げており、その中核の一つが世界第2位の海底油田であるアッパーザクム油田である。INPEXは2025年5月、子会社のジャパン石油開発(JODCO)を通じ、ADNOCおよびエクソンモービルとともに、同油田の生産能力を日量100万バレルから150万バレルへ拡張する段階的開発計画で合意した。アッパーザクムは世界最大級の海上油田であり、日本企業がUAEの増産戦略に直接関与している点は重要である。
サウジアラビアとの関係が売買中心であるのに対し、UAEとは共同開発を通じた投資・権益関係で結ばれている点は大きな差である。日本企業が現地で得る権益原油が必ずしも全量日本へ直送されるわけではないものの、上流権益への直接的な関与は、供給不安時に日本の調達余地を広げ、産油国との交渉力を高める要素となる。
加えて、UAEは供給体制の冗長化に向けたインフラ整備も進めている。中東からの原油輸出は現在、ホルムズ海峡を巡る輸送制約を抱えているが、UAEは既存のアブダビ-フジャイラ原油パイプラインに加え、同海峡を迂回してオマーン湾側のフジャイラから輸出する新たなパイプライン建設を加速させている。Reutersによれば、新パイプラインはすでに約半分が完成しており、2027年の稼働を目指す。
既存パイプラインと合わせてフジャイラ経由の輸出能力を拡張することで、UAEはホルムズ海峡への依存度を下げようとしている。こうしたホルムズ海峡への依存度を下げる迂回ルートの拡充により、UAEからの供給ラインは、日本のエネルギー安全保障の強化の観点から、一段と重要となるだろう。
(伊藤忠総研主任研究員 浅岡嵩博)







