上司を動かす「ストーリーづくり」で
多くの人がつまづくポイントは?

 上司が動きたくなるストーリーを考えるとき、多くの人が最初につまずくのは、短期的・近視眼的に考えがちな点です。

「案件が進捗中なのに、役割を変えてなんて言い出せない」
「みんなが忙しい中で異動を希望するのは申し訳ない」
「起業したいと伝えたら、お世話になった上司を裏切る気がする」
「今の業務でも手一杯なのに、他の業務もやりたいと言ったら回らなくなる」

 そうした躊躇や不安も分かりますが、ストーリーは長期的・俯瞰的に考えてみましょう。たとえば、「別の部署で仕事をしてみたい」という相談ひとつ取っても、短期的には忙しい中での戦力ダウンで歓迎されないかもしれません。

 しかし、「異動を通じて複数の経験を持つ人材として会社全体に貢献できる」「部署間をつなぐハブ(結節点)を担える」「異動した部署で現部門との業務連携も企画できる」「人事ポリシーである自律的に成長する人材を目指したい」など、異動によって、どのような価値が生まれるのか。会社の方向性(企業理念・中期経営計画・パーパス・人事ポリシーなど)とリンクしているのか。それによって会社にはどんなメリットがあるのか。

 これらが一本の線でつながって初めて、「検討する材料」になります。

 組織内での意思決定は、ビジネスである以上は「損か得か」で判断されます。上司や経営陣は、この提案を受け入れることで得られるメリットと背負うリスク、受け入れなかった場合の機会損失を総合的に判断して意思決定を行います。この問いに自分なりの仮説を持ってプレゼンテーションできるかどうかで、ストーリーの説得力は大きく変わります。

 私が書籍の出版を上司に相談したときも、「書きたい」という自分の意思(WILL)が出発点ですが、この話は最小限にしました。代わりに、「これまでの同テーマでの研修受託実績」「社会的なトレンドや想定ニーズ」「過去実績から想定される出版による新規売上」「メディア露出増加による事業部の認知向上」という要素を数字と事例で整理しました。