大手チェーン書店の多くは
本以外で稼いでいる

 ところが、人をひとり雇った途端、経営の難易度は一気に上がります。給与や社会保険が加わるからです。だから、「書店をやりたい」と思っている若者に対しては、心から応援したい気持ちと、「その先の覚悟は持っているか」という老婆心の両方を抱いてしまう。

「大好きな本に囲まれて生活する」と言えば聞こえはいいですが、独立系書店の経営を継続させようと思ったら、店主に相当にクレバーな戦略と優れた商売センスが要求されます。

 しかし、ここで立ち止まって考えてほしいのですが、「クレバーな戦略と優れた商売センス」を持つような自主独立の若者が、こんな儲からない業界にわざわざ飛び込んでくるでしょうか?「儲からない」だけならまだしも、「食っていけない」となると、合理的な判断ができる若者の選択肢にはなりようがない。

「本が大好きだから」という純粋な理由から書店を始めた若者が、夢破れて業界から去っていったという痛ましい事例は、すでに相当な数に上るはずです。

 今、残っている老舗チェーン書店や大手チェーン書店の多くは、「書店としての利益」だけで成り立っているわけではありません。たとえば、神奈川県に拠点を置く有隣堂の場合、書籍・文具・雑貨などの店舗運営、自社出版の他、事業の柱として安定して利益を出しているのは、オフィス通販「アスクル」の代理店業務(いわゆるBtoBビジネス)だそうです。

 また、紀伊國屋書店は店舗の売上に負けず劣らず、大学や企業への外商(売場を通さない直接販売)が強いようです。他にも、ガソリンスタンドやシステム開発など、まったく別の事業で利益を上げ、書店部門を支えている会社も少なくありません。

 こうした現状を踏まえるなら、これから残っていくのは資本力があり、かつ本以外の事業でしっかり利益を出せている法人だけになるのではないか。書店はその会社にとって「祖業」や「地域貢献」の一環という位置づけで、収益の柱が別にあるから営業を続けられる。私に見えているのは、そのような未来像です。