AIに関する基礎知識とその応用経験が必要な時代

 河合さんによれば、AI分野では理系と文系の差がなくなってきている。高校数学で扱う行列、微積分、確率の3分野の基礎がある程度分かれば、AI、特に機械学習についての理解はかなり進む。

河合 これからの時代、人事部門の担当者に限らず、AIに関する基礎知識とその応用経験は非常に重要なスキルになります。この機会に挑戦してみる価値は十分にあります。そしてもちろん、人事部門の業務に活かし、結果を出すことが重要です。

 上場企業であれば、すでに人的資本経営に関する情報開示が義務化されており、さらに離職率を下げていくことが人的資本経営の実践に繋がっていきます。そのためには、とりあえず、手元にあるデータで何ができるか考え、できるところから手を付ける。それが個別の離職確率を予測することであったり、エンゲージメントサーベイの結果を他のデータと有機的に掛け合わせてみたりすることであったりします。

 現場における人の課題という意味では、サービス業・小売業や飲食業において、来店客数や発注量を予測することによって人の手当がしやすくなるといったことにつなげられるかもしれません。営業部門であれば、エース社員の退職リスクを事前に察知してアドバイスすることができるかもしれません。いずれも、「こういうデータを提供してもらえれば、人事で分析してフィードバックします」と働きかけることで、人事部門への信頼が高まり、社内におけるポジションが上がるはずです。

 人事部門のこうした機能や役割は、経営目線で事業部門と組織の課題解決をサポートしていくHRBP(Human Resource Business Partner)として欧米企業の間では広がっており、最近は日本企業でも注目されている。人事部門がかつてのようなバックオフィス部門から、経営戦略に直接的に貢献する立場へ進化していくために、AI活用が強力な武器になることは間違いない。