いじめの「認知件数」より
暴力行為の増加に注目すべき

 不登校のきっかけが「友人関係」だとすれば、いじめや暴力行為が不登校と関連があるかもしれません。下のグラフはいじめの急増のように見えます。

図表:いじめの認知件数の推移、暴力行為の発生件数の推移同書より転載 拡大画像表示

 ですが、「いじめが増えた」とするのは早計です。これは「認知件数」です。「認知件数」とは「発見件数」のことです。「いじめが増えた」かどうかは分からないのです。

 2015年からの「認知件数」の急増は、その2年前に「いじめ防止対策推進法」が施行されたことと大きく関連します。この法律は、学校側にいじめを受けた側からの申し出があったら、いじめの有無を確かめるより早く即座にその子を守るなどの対応を義務付けました。

 一方で、暴力行為は不登校の要因になる可能性はあります。直接暴力を受けなくても、それを見ている子が恐怖を感じ、学校に来られなくなる場合も少なくないからです。特に気になるのは、小学校の暴力行為の増加です。コロナ禍を経て、1000人あたりの発生件数は中学校を追い抜きました。

 小学校の不登校の増加と暴力行為の増加は、ほぼ同時期に始まります。なぜこの時期なのか。

 それは次で解説します。

ゆとり教育の反動で生まれた
詰め込み教育のゆがみが噴出

『子どもの不登校が心配になったら知りたいことが全部のってる本』書影子どもの不登校が心配になったら知りたいことが全部のってる本』(主婦の友社編、小林正幸監修、主婦の友社)

 不登校や暴力行為が起きがちなのは、思春期の問題だと思われていました。しかしここ10年ほどで小学校の不登校が増え、学校での暴力行為も急増しています。その背景には、小学校における授業時間数の増加があると考えられています。

 学校の授業時間数は学習指導要領で決められていて、指導要領の改訂に合わせて変わることもあります。1997年までは、小学校6年間の学習時間は5785時間でした。それが「ゆとり教育」の始まりによって5367時間にまで減りましたが、「ゆとり教育での学力低下」を問題視する声が上がり、2008年の改訂では授業時間は5645時間に増えました。さらに17年の改訂では97年以前の5785時間にまで増加したのです。

 しかし97年以前と現在とでは、状況が違います。それは学校週休2日制です。登校日数が週5日に減っているにもかかわらず、授業時間数は週6日と同じ。少ない日数で授業時間数を消化するためには、1日のコマ数を増やすしかありません。5時間だった日が6時間になり、低学年の子どもたちも年間で学ぶ時間数は増えました。コロナ禍も重なり、そのストレスが暴力行為などに表れたことも考えられます。