業績を分ける
「変化への対応力」
それは変化への対応力だ。
例えばユニクロは、近年の長引く残暑に対応し、夏物商品の販売期間を柔軟に延ばしている。かつてアパレル業界では、お盆が過ぎれば秋物へと売り場を切り替えるのが一般的だった。しかし近年は9月、場合によっては10月まで暑さが続く。そうした気候変化を素早く捉え、商品展開を見直したことが成果につながっている。
一方で、家具やインテリアなどの耐久消費財分野ではやや苦戦も見られる。コロナ禍で在宅時間が増えた際、多くの家庭が家具や住関連商品を購入した。その反動もあり、現在は需要が一巡した状態が続いている。
同じ小売り業界でも、外出需要の回復を追い風にアパレルは比較的好調だ。ユニクロやしまむらだけでなく、中価格帯以上のブランドにも一定の需要がある。価格だけでなく、自分にとって価値があると感じられる商品にはお金を使う消費者が存在していることを示している。
近年、小売り業界で存在感を高めているのがデータ活用だ。
多くの企業がアプリや会員制度を整備し、顧客との接点を増やしている。ドラッグストアや百貨店では、購買履歴に応じてクーポンやおすすめ商品を配信する仕組みが一般化した。企業は顧客の年齢層や購買傾向、来店頻度などを分析し、それぞれに合った提案を行うようになっている。
実際に、顧客分析を強化した企業が成果を上げるケースも増えている。無印良品ではスキンケア商品がヒットし、業績回復の大きなきっかけとなった。しまむらも市場分析や顧客調査を強化する体制づくりを進めている。
ただし、小売り業はデータだけで成り立つ世界ではない。購買データから「何が売れたか」は分かる。しかし「なぜ売れたのか」「なぜ買わなかったのか」までは数字だけでは見えにくい。だからこそ現場で顧客の行動を観察し、その変化を感じ取る力が重要になる。データ分析と現場感覚の両方を持つこと。それが今後の小売り業における大きな強みになっていく。
では、こうした業界で活躍するためには、どのような人材が求められるのだろうか。まず挙げられるのは、データを活用する力だ。マーケティングや顧客分析への理解は、今後ますます重要になる。売上データや購買履歴を読み解き、そこから仮説を立てて行動につなげる能力は、多くの企業で求められている。
しかし、それ以上に重要なのが変化を読み取る力だ。
消費者の価値観は常に変化している。気候も変わる。生活スタイルも変わる。そうした変化をいち早く察知し、「今何が起きているのか」を考え続けられる人材が求められている。販売員であれば売り場での小さな変化に気づく観察力、店長であればスタッフをまとめながら顧客ニーズを把握する力、本部や経営層であれば現場の声とデータを結び付けて戦略に落とし込む力が必要になる。
(野村證券 シニアアナリスト 山岡久紘氏への取材を基に編集チームが構成)









