あぁそういえば、とウン十年前の子ども時代がよみがえりました。見えるのは、道の端っこにある石の棒の前で立ちすくむ小学生の私です。私の父は控えめに言って愛情表現ドヘタな人(現在進行形)。

 そんな父なりに大人主体の家族旅行のなかに少しでも一人娘を喜ばす要素を取り入れようとしたのでしょう。当時から歴史好きだった私のために何かと史跡めぐりを旅程に含めてくれるのですが、散々歩いてたどり着いた場所には「ほにゃらら城郭跡」だの「なんちゃら宿場跡」などと刻まれた石碑がポツンと立っているだけ、ということが少なからずありました。

 歴史は歴史でも私が好きなのは当時から古典文学や服飾だったのでまったく刺さらず。

 でもつまらなそうな顔を見せると途端に父が機嫌を損ねて空気が悪くなることも分かっているので、無理して興味をそそられているふりをするのがどんなに苦痛だったか。

子どもが楽しめれば
それで満点

 そこへ、さらに数年前の記憶が追い打ちをかけてきます。

 当時昆虫が好きだった長男のために、かの有名な養老孟司先生と一緒に昆虫採集をしてお話を聴けるという貴重なイベントに申し込んだんですよ。しかし、大勢の子どもたちが元気に手を挙げ質問したり意見を言ったりして大いに盛り上がっているなか、長男はほぼ「無」。終わってから感想を尋ねても、

「うーん……あんまりよく分かんなかった……」

 とポツリ。えー!!

 いやいや、あんなに著名な先生と直接昆虫のお話ができるチャンスだったのに!家であんなに昆虫の話してるじゃーん!と長男の反応に納得いかなかったのは……そう、私。

 いや自分!!父親とおんなじことしとるやないかーい!!

 昔から著書を読んでお顔も知っている大人の私にとってはすごい人。でも子どもにとってはどこかの知らないおじいさんなんですよね(先生ゴメンナサイ)。昆虫好きと言っても長男が好きなのは一人でじっくり観察したり情報収集したりすることで、たくさんの知らない子どもたちとワイワイ虫捕りするのが好きなわけではなかった、と。