大学を卒業以来、何十年も頭をフルに使う仕事をしてきて、脳も心も疲れてしまったのでしょう。私も同じコピーライターとして「分かるわぁ、その感じ」。脳と心を削る「フル現役」時代とは正反対の仕事をしてみたい、に共感される方もいるのではないでしょうか。

 例えば、営業でずっと数字に追いかけられてきた方は、人手不足が深刻な介護や保育の現場で、体を使う「ゆる現役」はいかがでしょうか。「今までとは正反対の仕事を、ゆる現役で」という動機で、もちろん良いのですが、「定年後は、困っている現場をサポートする」という志からスタートするのもカッコいい。忠心を誓った会社のため、ではなく社会のために働くのです。

『“引退しない人生”をデザインする 無定年の設計図』書影“引退しない人生”をデザインする 無定年の設計図』(三嶋(原)浩子、高橋書店)

 もちろん「ゆる現役」とは言え、心身が健康でなければ難しいですが、人の役に立っていると実感することで、免疫力も上がり、健康が維持される好スパイラルを生むはずです。お金のため、ではなく、健康のために働くというわけです。

「フル現役」から「ゆる現役」へ。それは、長年頑張ってきたご褒美のようでもあります。50・60代は、会社のために尽くしてきた世代です。自分を押し殺す場面も多々あったでしょう。男性なら、家庭のことは妻に任せきりで「育児に参加したかった」と、後悔する方もいるでしょう。そんな悔いを取り戻せるのが「ゆる現役」という生き方です。

「肩書きはずれてラクになったよ!」という叫びは、おじさまの本音かもしれませんね。自分を縛っていた会社という港から、魂のロープをほどき、新しい航海へ出ていく。そう考えると、「先々が不安」とその場で足踏みするのではなく、前向きに捉えられるのではないでしょうか。目指す「ゆる現役」の職種を具体的に考え、不安からの脱却・発想の転換になることを願ってやみません。