高級時計の「購入代行」は
いったい誰が募集しているのか?
そもそも「購入代行アルバイト」は誰が何の目的で募集しているのだろうか。自分で買えば済む話なのに、見ず知らずの人に高額報酬を払って、時計を買ってきてもらうことにどんなメリットがあるというのか。
結論から言おう。依頼者の素性はさまざまだが、「トクリュウ」(匿名・特定流動型犯罪グループ)のような犯罪集団であることが多い。国際的な犯罪組織や詐欺グループの場合もある。
彼らの多くは、表向きは「経営コンサルティング」や「富裕層向け資産管理アドバイザリー」のような一般企業を装っているが、実態は異なる。
こうした犯罪組織が、「購入代行バイト」を募って高級時計を買い漁る理由の一つは「マネーロンダリング(資金洗浄)」である。
犯罪組織は、特殊詐欺(オレオレ詐欺)や強盗などで得た「汚れた現金」を、そのまま銀行に預けたり、正規ルートで国際送金したりすることはない。高額現金を頻繁に入出金すると、不審に思った銀行から通報され、捜査対象となるリスクがあるからだ。
Photo:Leon Neal / Gettyimages
そのため犯罪組織は、カネの出所を分かりにくくする目的で、資金を高級時計などの形に換えることがある。「汚れた現金」を元手に高級時計を買って転売すれば、資金の流れを追跡されにくくなる。犯罪で得た収益を「正当な取引で得た資金」のように装うこともできる。
彼らは高級時計に「身に着ける芸術作品」としての価値を感じて収集しているわけではない。犯罪で得たカネの出所を隠すための “闇の通貨”として重用しているだけである。
こう書くと大げさに見えるかもしれないが、筆者は陰謀論を騙っているわけではない。日本の警視庁や国際刑事警察機構(インターポール)、欧州警察機構(ユーロポール)も、高級時計がマネーロンダリングに利用されていることを認識し、摘発を行っている。
時計ブランド側も、こうした実態を「ブランド価値を毀損する大問題」として捉え、ブロックチェーン技術を活用して所有履歴を可視化したり、「認定中古品」ビジネスを自ら始めたりと、さまざまな対策に取り組んでいる。
だが、トクリュウなどの犯罪グループは、そうした監視や対策の目をかいくぐり、高級時計の購入代行ビジネスを巧妙に展開している。







