クルマがドライバーの好みを学習する未来
F:まず安全。そしてEVはAIによる細かな制御との相性が良いと。
樋:はい。「AI」と一言で言っても、範囲は本当に広いものです。たとえば、この人はスターバックスのコーヒーが好きだよね、と学習すれば、ルート上で自動的に提案する。走り方も、高速道路を速く行きたい人もいれば、ワインディングを走りたい人もいる。海沿いを走りたい人もいる。そういうことをクルマがドライバーに合わせてカスタマイズしていく。これもAIによる利便性のひとつだと思っています。
F:なるほど。AIと聞くと、どうしても「自動運転で全部お任せ」みたいな話を想像してしまいますが、樋渡さんのお話はとても現実的ですね。地に足が着いているというか。
まず安全。その上で安心があり、利便性がある。クルマが勝手にどんどん判断するのではなく、ドライバーの癖や好みを学習して、移動の質を少しずつ良くしていく。
樋:AIを使うこと自体が目的ではありませんので。お客様にとって安全で、安心できて、便利になることが大事です。そのためにAIをどう使うか、EVの制御性をどう活かすか。これを中心に考えていきたいと思っています。
左が日産オートモーティブテクノロジーの磯部博樹さん、右が日産の樋渡伸二さん Photo by A.T.
「フューチャースタンダードEV」という名のバトン
前回、前々回にご登場いただいた磯部さんは、3代目リーフを実際に造り込んだ開発責任者である。EV専用プラットフォーム、静粛性、滑らかな加速、正確な残量予測、充電計画。16年に及ぶリーフの蓄積を、ひとつのクルマとして形にした。
一方の樋渡さんは、そのリーフをこれから背負っていく人物である。
しかも長く電子電装を専門にしてきたエンジニアであり、アリアのDCVEを経て、リーフの開発責任者に就任された。これは単なる世代交代、担当者交代と見るべきではあるまい。EVがハードウェアだけでなく、新たな次元へと踏み込んでいく象徴としてのバトンタッチではあるまいか。







