キオクシアの投資1.4兆円さえ見劣り...
日本は法人の定期預金が25兆円も増加

 トランプ米大統領が5月に訪中した際、フアン氏は土壇場で経済使節団に合流した。中国のAI関連需要(GPUやパソコン、ロボティクス)を何としても取り込もうとする、強い意志が感じられる。同氏は、中国では中国企業と、その他の地域では韓国、台湾、米国企業と連携することで、AI関連の需要を創出しようとしている。

 気になるのは、フアン氏の構想における、日本企業の位置づけだ。今回、フアン氏は日本を素通りした。同氏の頭の中では、日本企業より台湾、韓国、中国企業が優位と見ている可能性はある。

 設備投資の規模を比較すると、確かにそう思わざるを得ないかもしれない。現在、わが国で、AI関連の先進の半導体を大規模に供給できる企業はキオクシアだけだ。同社は、今後3年間で年平均4700億円(総額1.4兆円)の設備投資を行う計画。一見すごいが、この規模は競合と比較すると、見劣りする。

 サムスン電子は昨年、設備投資に52兆7000億ウォン(約5.5兆円)を投じ、今年はさらに積み増す計画だ。SKハイニックスも同様に、昨年の設備投資(30兆2000億ウォン、約3.2兆円)を積み増すようだ。TSMCは今年、約8兆円の設備投資を行うという。いずれも研究開発費は別で、AIチップ関連企業の買収や出資も含めれば、先行投資額はさらに上振れるだろう。

 そうした状況を見る限り、わが国企業が強い成長志向を明確に示しているとは言い難い。積極的なリスクテイクによる設備投資の姿勢は今、どうなっているのか――。ひとつの目安として、ここ2年で法人の定期預金残高が25兆円も増加している。企業は設備投資よりも“安全策”を選択しているのだろう。

 日本には、産業用ロボット分野で競争力の高い企業がある。半導体のパッケージングや関連部材で、世界トップの製造技術を誇る企業もある。ところが、世界トップのAI関連企業であるエヌビディアにとって、日本企業の踏み込み方は十分ではないのだろう。

 成長期待の高い分野で、相応のリスクを取り需要創出を目指す。そうしたアニマルスピリットを発揮できるかが、日本企業に問われている。それができないと、AIの世紀、世界の主要企業が日本を素通りする、ジャパン・パッシングは一段と鮮明になるだろう。日本がAI革命で生き残れるか、不安が残るばかりだ。

真壁昭夫さんのプロフィール