この現象を、欧米メディアや日本メディアは「極右」の台頭と呼ぶ。国民連合は移民制限、治安強化、EUへの懐疑、ウクライナ支援への慎重姿勢など、既存のリベラル秩序と対立する要素が多い。
だが、「極右」という乱暴な言葉だけで片づけると、フランスで起きている変化の本質を見誤ることになるだろう。いまフランスで進んでいるのは単なる右傾化ではない。フランスが本来持っていた国家観への「先祖返り」と見るべきである。
トランプ現象との共通点と相違点
国民連合の躍進を、アメリカにおけるトランプ現象と重ねる見方は多い。この見方には一定の根拠がある。
「都市」対「地方」、「中心」対「周縁」、「高学歴エリート」対「生活者」、「グローバル化の勝者」対「取り残された人々」。これらの対立において、後者が支持するのがトランプであり、ルペンである。
さらに、移民への不満、治安不安、メディア不信、政治エリートへの怒り。こうした構図は、アメリカのトランプ支持層とフランスの国民連合支持層に共通している。反リベラル秩序という大きな文脈でも、両者は確かに同じ側に立っている。
だが、両者を同一視するのは危険である。共通しているのは「何に怒っているか」であって、「何を取り戻そうとしているか」ではない。
トランプの「アメリカ・ファースト」は、覇権国アメリカが、同盟、自由貿易、移民、リベラル価値外交の負担を拒否する運動である。背景には、都市生活者に対する地方・内陸部の反発、ポリティカル・コレクトネスへの嫌悪、開拓者的な自立精神、マッチョな政治感覚がある。目指すのは、力による取引を原則とする強いアメリカの復活である。
それに対して、ルペンの「フランス第一主義」は、アメリカ型の取引国家を目指すものではない。ルペンが取り戻そうとしているのは、文化大国としてのフランス、共和国としてのフランス、ライシテ(政教分離の共和主義原則)を重んじるフランス、フランス語とフランス文化を軸にした国民統合、そして、外交的自立を備えた主権国家としてのフランスである。
トランプはアメリカを再び強い取引国家にしようとしている。一方、ルペンはフランスを再びフランスにしようとしており、それぞれに取り戻そうとしている「先祖」の中身が本質的に異なっている。







