マクロン勝利はポピュリズム敗北にあらず、仏大統領選の世界への教訓とは?マクロン氏とルペン氏は政治的に相互依存関係?Photo: Ludovic Marin/Pool via REUTERS/AFLO

『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』の著者ヤニス・バルファキス元ギリシャ財務相による連載。今回のテーマは、フランス大統領選の教訓です。極右ポピュリストのルペン氏を破って選挙には勝ったマクロン氏ですが、ポピュリズムを退けたとは言えません。「左でも右でもない」中道の政治家が陥りがちな罠とは?

 フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、互いに嫌悪感を抱く対立候補に大差をつけて再選を決めた。それによって、双方の陣営の間に存在した一種の相互依存関係がほぼ見えなくなってしまった。

 マクロン氏と、政敵である極右マリーヌ・ルペン氏が互いを嫌悪しているとしても、2人の間には一種の政治的な共生関係が育まれている。この関係は、フランス、欧州、さらに広く世界各国が直面する窮状について、極めて重要な洞察を与えてくれる。

 「ルペン勝利」という妖怪のおかげで現職大統領がエリゼ宮に帰還するという伝統は維持された。マクロン氏以前にも、20年前には、マリーヌ氏の父親であるジャン=マリー・ルペン氏を相手取って、ジャック・シラク氏が有権者の82%を結集させた。

 だが、20年前と今回とでは状況が異なる。