国民連合の勝利はEUをどう変えるか
もし国民連合の候補が2027年大統領選で勝利すれば、EUにとって大きな打撃となり得る。
フランスはEU創設国であり、ユーロ圏第2の経済大国であり、核保有国であり、国連安保理常任理事国でもある。ハンガリーやイタリアの右派政権とは影響力の規模が違う。国民連合政権は、EU予算への拠出、移民政策、環境規制、対ロ制裁、ウクライナ支援、共通防衛、単一市場ルールをめぐって、ブリュッセルと衝突する可能性が高い。フランスがEU統合の推進役から抵抗勢力に変われば、EUの意思決定は確実に重くなる。
ただし、ルペンのフランスがEUを壊すと見るのは言い過ぎだろう。国民連合はEU離脱ではなく、超国家的統治の強化への抵抗を目指している。EU側から見れば統合の停滞であり、欧州の弱体化である。だが、国民連合支持者から見れば、それはフランスを取り戻すことなのである。
「先祖返り」の中身の違い
2027年フランス大統領選で国民連合が勝利するとすれば、それは単なる極右の勝利ではない。フランス国民が「フランス国家をフランス国民のために取り戻せ」と要求する政治的反乱である。
トランプ現象とルペン現象には確かに共通する怒りがある。リベラル国際秩序への反発、グローバル化に取り残された人々の声、エリートへの不信。その意味で両者はたしかに「先祖返り運動」という同じ棚に並べることができる。
しかし、前述の通り、取り戻そうとしている「先祖」の中身が根本的に違う。トランプが目指すのは開拓者精神と力による支配、すなわちアメリカらしさへの回帰である。ルペンが目指すのは、文化・共和主義・主権国家としてのフランスらしさへの回帰である。
この違いを「極右台頭」という一言で覆い隠すことは、21世紀の政治変動を読み誤ることに直結する。アメリカはアメリカらしく、フランスはフランスらしくあろうとする力が、いま同時に高まっている。
2027年、フランスという国家がふたたび「フランスらしさ」を取り戻せるのか。もし国民連合の候補が大統領選で勝利すれば、EUという枠組みの解体か変質、そして欧州の地政学的なパワーバランスそのものを揺るがす帰結を伴うことになる。私たちは「極右台頭」という安易なフレーズをいったん捨て去り、この変革の胎動を冷徹に見極める必要がある。
(評論家、翻訳家、千代田区議会議員 白川 司)







