ADHDという言葉が生まれたのは、たったここ数十年の話です。もともと「多動な子どもがいる」「しつけだけでは説明がつかない」とは認識されていましたが、脳神経の働きが原因であるという発想はなく、いろいろな名前で表されてきました。
そんな中、アンフェタミン系の薬を試したところ、多動、落ち着きのなさ、といった症状の「改善」が見られたことがきっかけで、この現象は単に心や性格の問題ではなく、脳神経の機能に関係していると気づいたわけです。そこからADHDという概念が形成されていきました。
アンフェタミンは覚醒剤の一種です。現在では考えられないような試みですが、「アンフェタミンを薬として使ってみよう」と最初に考えた医師がいたようです。
もっとも、かつてアンフェタミン系薬剤は今ほど危険視されておらず、学生や軍隊のパフォーマンス向上のために広く世間で使用されていました。日本でも、第二次世界大戦中には「ヒロポン」という名前で流通していたほどです。
しかし、妄想や幻覚といった激しい精神症状や依存性を引き起こすことがわかり、現在では世界的に使用に規制がかかっています。現在ADHDの患者さんに使われる「中枢神経刺激薬」は、改良を重ねて安全性を高めたものになっています。
なぜ薬が効くのか?
ADHDのメカニズム
なぜ薬が効くのか、ADHDのメカニズムについて少し説明しましょう。現在も研究が進められておりさまざまな説があるのですが、そのうちの仮説の一つに、「CSTC回路説」があります。
CSTC回路とは、「Cortico-Striato-Thalamo-Cortical」(大脳皮質-線条体-視床-大脳皮質)の略で、脳内の神経ネットワークのひとつです。この回路は、注意の維持や衝動の抑制、行動の制御を担っています。
通常、CSTC回路は必要な情報だけを通し、不要な情報を遮断することで集中力を維持し、衝動を抑える働きをします。しかし、ADHDではこのフィルター機能がうまく機能せず、注意が散漫になったり、衝動を抑えにくくなったりすると考えられています。
ADHDの診断には大きな意義があります。個人差はあるものの、薬によって神経伝達物質を調整してCSTC回路の働きを整えることで、困り具合が大きく改善するケースが多いからです。







