ホロスの名物対談企画に
元金融庁長官の遠藤俊英氏が登壇
保険乗合代理店協会の前理事長であり、大型保険代理店グループのホロスホールディングス社長を務める堀井計氏。そのホロス傘下の教育研修事業を営むエルティヴィーには、今や名物企画となった対談番組「ホケンブリア神殿」がある。
この企画は保険業界のレジェンドを招き、堀井氏が舌鋒鋭く切り込んでいくというスタイルの対談だが、今回1月25日には保険業界の枠を超えた大物が登壇した。元金融庁長官の遠藤俊英氏だ。
遠藤元長官といえば、金融業界では知らない人がいない大物官僚であり、強面ながら情に厚く、金融業界のみならず当局内でも慕う人がすこぶる多い人物だ。また、規制監督当局であり行政処分の印象が強い金融庁だが、それでは金融機関が萎縮して本来取るべきリスクが取れなくなったため、金融機関との対話を重視して金融仲介機能を十分に発揮できるよう検査マニュアルを廃止するなど、その背中を押してきた。
つまり、金融行政だけでなく金融庁の在り方についても変革してきた人物といえる。その遠藤元長官を招いての対談だけに、オンラインでの視聴者数が600人を超える盛況となった。
それもそうだろう。保険業界の中でも乗り合い代理店業界は1996年の保険業法改正により生損保の相互参入など規制緩和が行われ、乗り合い代理店もこのころに誕生した。その後14年頃から規制強化に舵が切られ、2015年の保険業法の改正では比較推奨販売や意向把握義務などが課される法律が成立(16年5月施行)、乗り合い代理店業界にとって大きな転換点となった。
まさに、この頃に監督局長を務めていたのが遠藤元長官であり、森信親元金融庁長官が提唱し、今や保険業界にとって経営の一丁目一番地に置かねばならなくなった、顧客本位の業務運営(フィデューシャリー・デューティ=FD)を推進してきた人物だ。
堀井氏にしても、保険業界の規制緩和を機に独立して保険代理店を01年に創業、業容を拡大してきた。実際、堀井氏の読み通り、保険ショップを中心に乗り合い代理店が急拡大。だが、我が世の春を謳歌しているさなか、保険代理店側の都合で手数料の高い商品に誘導しているのではないかという疑念のもと、15年の業法改正が行われる事態となった。そして、最近では生命保険協会の主導のもと代理店業務品質評価運営制度が開始されている。
では、このような保険業界の流れの中で、遠藤元長官はどのように金融行政を行ってきたのか、また、顧客本位の業務運営についてどのように考えているのか、乗り合い代理店のことをどのように見ているのか。「前編」では、遠藤元長官が考える金融機関という組織の在り方について見ていこう。