
「日本トップクラスの還元率」をうたい、募集人を急増させて業界を席巻した乗り合い代理店「クリイト」。しかしその裏には、社会保険料の潜脱と再委託という二つの疑惑があった。そこで連載『ダイヤモンド保険ラボ』の本稿では、金融庁の立ち入り検査を経て、巨額な社会保険料の追徴金を支払い、疑惑の「施設管理法人」を廃止した同社の中山英樹社長に、運営の実態と改革への取り組み、そして今後の覚悟について話を聞いた。(ダイヤモンド編集部副編集長 藤田章夫)
急拡大の裏にあった「二つの疑惑」
金融庁のメスで事態は急転
「また、あの代理店に拠点を丸ごと引き抜かれたらしい」「募集人の採用で競合になると、ほとんど太刀打ちできない」――。乗り合い代理店の経営者たちが顔を合わせるたびに、怨嗟と警戒の入り交じった声で語られる名前があった。2025年の保険特集で取り上げた、20年8月に設立されたばかりの乗り合い代理店「クリイト」である(詳細は、25年3月24日に配信した『保険募集人の数が1年で3倍に急増した乗り合い代理店クリイトに怨嗟の声、違法性も懸念される「拠点ごと引き抜き→別法人設立」は本当か?』参照)。
同社は当時、驚異的なペースで規模を拡大していた。24年のデータによれば、クリイトの所属人数は前年から322人増の487人となり、増加率は実に195.2%。業界内の所属人数増加率ランキングで断トツの1位を記録し、たった1年で人員を約3倍に急増させるという“異常”な成長を遂げていた。
コツコツと地道に採用を続けて到達できる数字ではない。その背景には、ライバル代理店の募集人を「拠点ごと丸ごと引き抜く」という荒業があった。では、なぜそれほどまでに募集人たちはクリイトに吸い寄せられていったのか。
そのからくりこそが、同社の採用ページでうたわれていた「日本トップクラスの還元率」であり、ダイヤモンド編集部が昨年の保険特集で報じた「二つの疑惑」の温床であった。
一つ目の疑惑は、保険業法で禁じられている「再委託」に抵触する恐れのあるスキームだ。クリイトは拠点を丸ごと引き抜く際、拠点長に「別法人」を設立させていた疑いが持たれていた。個人で高額な報酬を受け取ると所得税率は最高で55%に達するが、別法人を介在させて受け取ることで、法人税率(最大23.2%)が適用され、さまざまな節税効果が得られる。
これは募集人の手取りを劇的に増やす手法だが、代理店と募集人の間に別法人が介在することは、保険会社からの適切な教育や管理が募集人に行き届かなくなるため、再委託として明確に禁じられている行為だ。
そして二つ目の疑惑が、乗り合い代理店業界にまん延する悪習である「社会保険料の潜脱」である。ダイヤモンド編集部が入手した複数の元クリイト募集人の支払い明細書には、不自然な数字が並んでいた。例えば、約3000万円の外交員報酬に対し、支払われている社会保険料はわずか約34万円。本来であれば約200万円となるべき金額であり、明らかに少額に抑えられていたのだ。
昨年の取材に対し、クリイト幹部は「別法人の設立は事実としてあるが、今後は改善に動く」としつつも、社会保険料については「一部だけ掛けているという事実はない」と反論していた。しかし昨秋に金融庁の立ち入り検査が実施されたことで事態は大きく動いた。社会保険料の潜脱が認定されて巨額の追徴金を支払うことになり、また再委託との疑念を持たれた「施設管理法人」という支店制度の抜本的改革にも踏み切ったのだ。
そこで今回、ダイヤモンド編集部は渦中にあるクリイトの中山英樹社長に単独インタビューを敢行した。昨年の疑念に対する「答え合わせ」と共に、2億円を超える巨額な追徴金支払い、そして社内の反発を押し切ってまで断行した施設管理法人の改革の中身について、赤裸々に語ってもらった。
――昨年、クリイト急拡大の裏にある「再委託」や「社会保険料の潜脱」の疑念について報じました。業界内で大きな波紋を呼んだだけでなく、その後、金融庁の立ち入り検査を受ける事態となりました。







