
いよいよ導入された新ソルベンシー規制(ESR)。この新規制の最大の特徴は「経済価値ベース」であることだ。ではなぜ、経済価値ベースを用いているのだろうか。この意味を正しく理解せず、形式的な活用にとどまってしまえば、新規制の意義が失われかねない。そこで、金融庁の検討チーム、有識者会議のいずれにもメンバーとして参加した筆者が、改めてなぜ経済価値ベースなのかについて考察を行う。連載『ダイヤモンド保険ラボ』の「プロフェッショナル・レポート」の後編となる本稿では、新規制導入の検討を行った有識者会議で提示された「経済価値ベース活用における3つの留意点」について考察していく。(キャピタスコンサルティング代表 森本祐司)
経済価値ベースの新規制導入にあたり
有識者会議が提示した「3つの留意点」
経済価値ベースの3つの留意点について
2026年5月18日配信の前編『保険会社の財務状況を適正に評価できる“唯一の方法”とされる「経済価値」とは何か?その意味と効用を専門家が徹底解説』では、経済価値ベースの定義を「将来キャッシュフローの現在価値に基づき資産・負債を評価する考え方」と整理し、それが保険会社の財務状況を適正に評価できる「唯一の手法」であることを解説した。
特に、将来支払う保険金を「原材料」と捉える視点を用い、従来の予定利率に固執する会計では見えなくなっていた「市場環境に応じた原価の変動」を正しく把握することの重要性を説いた。これにより、見掛けの利回りに惑わされる投資判断を避け、本来の資産負債管理(ALM)を徹底できることが新規制導入の大きな効用となる。
後編となる本稿では、新規制の導入に当たり、2019~20年にかけて行われた「経済価値ベースのソルベンシー規制等に関する有識者会議」の報告書で示された「3つの留意点」について具体的に考察していく。その留意点とは、下記の3点だ。
(1)保険会社の経営行動への影響
(2)消費者ニーズに沿った商品提供への影響
(3)保険会社の主体的なリスク管理の高度化等への影響
次ページではこの3点について、その意味と共に、真に留意すべき点は何かについて私見を述べる。







