東日本大震災の「10倍」
終わりなき除灰の絶望感
これまでの研究によると宝永噴火以前、富士山は5600年間で約180回、「約30年に1度ペース」とわりと頻繁に噴火していた。ということは、320年近くもエネルギーが溜め込まれている現在は、いつそれがあふれ出てもおかしくない危険な状態かもしれないのだ。
実際、富士山の火山活動の研究を続けてきた第一人者である藤井敏嗣・山梨県富士山科学研究所長は内閣府が出したシミュレーション映像の中で「富士山は必ず噴火する」と断言している(内閣府「富士山の大規模噴火と広域降灰の影響 全体版(10分07秒)」)。
ただ、多くの日本国民が怯えて暮らす「富士山噴火」だが、実際にどんなあたりが本当に恐ろしいのかということまでは、あまり知られてはいない。
富士山近くの住民が、噴石(火口から飛んでくる岩石)や溶岩流など直接的な被害があることは、過去の火山噴火からイメージできているが、被災地を遠く離れ、日本社会全体がどんなパニックに陥るのか、ということまではわかっている人は少ないのではないか。
よく言われるのは「3時間で首都機能麻痺」だ。
今の被害予測では、噴火後、2時間ほどで首都圏まで火山灰が飛んできて降り積もる。
そうなると、交通機関は広範囲で停止・通行困難となり、帰宅難民が発生する。物流にも深刻な影響が生じるので、食品などの物資不足が起きる。また、携帯電話の基地局や火力発電所に降り積もると、停電を引き起こすので、大規模な停電や電波障害が起きてしまう。さらに、浄水場などに降灰すればフィルターなどが目詰まりを起こして断水が起きる。
ここまで首都圏のインフラが壊滅的な被害を受けてしまうと、全面復旧にはかなり時間がかかる。
業など首都圏を拠点とする経済活動はもちろん停止するし、政府機能も麻痺する。自然災害や国家安全保障上の問題が発生したら、日本全体でコロナ禍どころではない大混乱に陥るのだ。
ただ、実はこれは富士山噴火がもたらす恐怖のほんのプロローグに過ぎない。あまり知られていないが、富士山噴火がもたらす災難は実はこれからが本番なのだ。
富士山から首都圏にかけて大量に降り積もった火山灰は決して雪が解けるように自然に消えることはない。雨が降れば固まってしまうし、乾燥して風が吹けば舞って、またどこか別のところに降り積もる。
つまり、いたるところにある火山灰を回収して処分するという「除灰」をしなくてはいけないのである。
「まあ、大変だけれど、桜島のある鹿児島の人とかは日常的にやっているんだし、そんなに恐ろしいものではないでしょ」と拍子抜けした人もいるかもしれないが、恐ろしいのは「除灰」という作業ではなく、「量」である。







