「二次災害」と「健康被害」
江戸時代とは桁違いの打撃
富士山噴火によって降り積もった火山灰を放っておいたままにすると、「土石流災害」や「河川の氾濫」を引き起こすことがわかっている。山梨県富士山科学研究所の吉本充宏研究部長は前回の富士山噴火についてこう述べている。
神奈川県内など降灰が15cm以上の地域では、火口から遠隔地であっても宝永噴火後、しばしば土石流災害が発生した。特に、酒匂川下流域の足柄平野は深刻で、噴火翌年の1708(宝永5)年8月8日に台風による大規模な洪水・土砂氾濫が発生し、その後100年にわたって氾濫を繰り返した。また酒匂川以東でも、神奈川県二宮町葛川流域、平塚市金目川流域、秦野市大根川・善波川流域などでも氾濫が起こり、被害を出している。藤沢市では降灰により沿岸の海底が浅くなったため、沿岸での漁業に大きな影響が出たとの記録もある(「地域防災」P32 2023年12月号)。
こういう「二次災害」を防ぐためにも、地域によってはとにかくスピード最優先で作業に当たらなくてはいけない。つまり、除灰ロボットどうこうよりもとにかく、人海戦術でローラーをかけなくてはいけないのだ。
しかも、「除灰」を急がないといけない理由がもうひとつある。それは「健康被害」だ。
鹿児島の人はよくわかっているだろうが、火山灰は人体にただちに深刻な健康被害をもたらすものではないが、吸い込んでしまうと呼吸器疾患を引き起こすリスクがある。富士山噴火では約17億立方メートルという膨大な火山灰が発生するので当然、健康被害に見舞われる人も増える。
実際、1707年の宝永噴火でも健康被害は問題になっている。朱子学者・新井白石の自叙伝「折たく柴の記」には、富士山大噴火で黒灰が降り始めて、空中に飛散する大量の火山灰を吸った人の中に、呼吸器の疾患を起こす人が続出したと書かれている。
そして、先ほど申し上げたように、火山灰というのは自然に消滅するということがない。つまり、除灰しない限り、風が吹けばまた浮遊する。水に濡れて一時的に固まった火山灰も乾燥すればやがてボロボロと崩れて、何かのきっかけで空中に飛散してしまう。
「除灰」の作業に従事する人々は、ゴーグルや防塵マスクなど万全の装備が支給されるが、一般市民の中には軽装備で外に出てしまう人もいるので、想定している以上に火山灰による健康被害が広がってしまう恐れもあるのだ。







