アイルランドの調査団体「アイリッシュ・カウンシル・フォー・シビル・リバティーズ(ICCL)」が22年に公表した報告書によると、RTBでの利用者のネットの閲覧履歴や位置情報の共有が、米国だけで1日2940億回おこなわれているという。
EFFのサイファーズ氏は「信頼できない業者や、データブローカー、政府機関などにも利用者のデータが共有され、データがどこに行っているのかもわからない。広告全体の生態系のなかで、RTBは最大の問題だ」と指摘する。
こうした入札でやりとりされる広告の単価は、安いものでは1円にもみたない金額とされる。それでも「この業界はとても規模拡大がしやすい。利用者1人あたりの広告収入が小さくても、利用者が数億人いれば世界最大の企業になれる」という。
1万字超の利用規約の中に
個人情報収集への同意が潜む
調査会社イーマーケターによると、21年の世界のデジタル広告市場は4917億ドル(約76兆円)で、前年比約3割増と過去10年で最大の伸びをみせた。シェア首位のグーグルが3割を持ち、FB、アマゾンをあわせた3社で6割を占める。
「企業は一方通行の鏡を作った。あなたからはアプリや広告しか見えないが、ガラスの向こうの陰から、追跡者はあなたがやることのほぼすべてを人知れず記録している」。EFFは報告書でそう指摘した。
『ルポ・シリコンバレー AIブームと米国社会の断層を歩く』(五十嵐大介、朝日新聞出版)
こうしたディスプレー広告市場での独占を問題視したのが、米司法省が23年にグーグルを相手に起こした独禁訴訟の「第2弾」だった(編集部注/トランプ政権1期目の2020年、司法省はグーグルが検索市場で競争を阻害したとして、独禁法違反で提訴した)。
ビッグテックが膨大な個人情報を収集し、巨額の利益につなげてこられた背景にあるのが、利用者とテック企業の間に横たわる圧倒的な情報格差だ。
私たちがグーグルやメタなどのサービスでアカウントを作る際、利用規約やプライバシーポリシーに「同意」をする必要がある。だが、膨大な文字が並ぶ利用規約をすべて読んだことがある人は、どれだけいるだろうか。
たとえば、グーグルの利用規約(24年5月版)は、詳細なリンク先の文章をのぞいた本編だけでも1万字以上ある。グーグル自身も利用規約のサイトで「Googleは、こうした利用規約はできれば読みたくないというユーザーの心理を理解しています」と認めている。







