実は「渋滞回避」だった!?
「遠回り」するタクシー運転手の本音

 というのも、最短距離と最短時間、そして最安運賃は、実はそれぞれ別物だ。

 地図上の直線距離が近くても、その道が渋滞していれば、時間も料金も余計にかかる。逆に少し遠回りに見える道でも、信号が少なく流れがよければ、結果的に安く早く着くこともある。

 ドライバーは頭の中で、渋滞情報や工事情報、時間帯特有の交通量などを緻密に計算し、最適なルートを選んでいるのだ。

 しかし、利用者からすれば、こうした判断の根拠が見えないまま料金だけを支払うことになる。「本当にこれが最善のルートだったのか」と疑惑の念を抱くこともあるだろう。ドライバーの工夫が乗客に伝わらなければ、両者の溝は埋まらないのだ。

 では、この溝はどうすれば埋まるのか。

 ドライバー側がルート選択について丁寧に説明することも重要だが、それだけでない。タクシー業界の努力によって、過去の積み重ねによるマイナスイメージを払拭することも不可欠だ。

 過去に業界で問題になった行為は、遠回りだけではない。近場の行き先を告げただけで断る傲慢な対応や、乗車拒否。「どうせ近場だろう」という先入観に基づく、若い女性客をスルーする行為。かつての業界では、こうした行為が蔓延していた。

 その代償として、「タクシーは何をしてくるかわからない」という漠然とした不安が、今の乗客にも残っていると思われる。

 筆者の肌感覚でも、タクシーに乗るたびに「この運転手は信用できるだろうか」と身構える乗客は存在する。特に土地勘のない場所や、初めて乗るタクシー会社では、不安はなおさら強くなるようだ。