消費減税で物価高騰の原因は解消しない
一時的な効果に比べ大き過ぎる事務負担

 消費税減税の問題点はいくつもある。

 第一に、消費税を減税しても、物価高騰の基本的原因がなくなるわけではない。

 現在の物価上昇の大きな要因は、円安による輸入価格の上昇、エネルギー・食料品価格の高止まり、人件費や物流費の上昇などだ。

 これらは、消費税率を下げても解消しない。

 税率を下げれば、表面上の税込み価格は一時的に下がる可能性がある。しかし、それは価格上昇の原因を取り除くものではない。輸入価格が上がり続けていれば、企業は仕入れコストの上昇分を価格に転嫁せざるを得ない。

 消費税減税によって一時的に価格が下がったとしても、その後、コスト上昇が続けば、再び価格は上昇する。

 第二に、減税分が全て消費者に還元されるとは限らない。競争の激しい商品では価格引き下げが行われるだろうが、すでに仕入れ価格や人件費が上がっている事業者にとっては、減税分を利益の補填に使わざるを得ない場合もある。

 したがって、消費者が実際に感じる負担軽減効果は、制度上の税率引き下げ幅より小さくなる可能性がある。

 第三は、減税は需要を刺激することだ。物価高で苦しむ家計を助けるという目的であっても、減税によって消費が増えれば、かえって価格上昇圧力を強める可能性がある。食料品は生活必需品であり、需要が急激に増えるわけではないが、加工食品や外食に近い分野では、価格転嫁を容易にする効果が生じ得る。

 第四の問題は、減税による事業者の事務負担だ。小売店やスーパー、コンビニなど、広範な事業者が対応を迫られる。

 レジシステムの改修、価格表示の変更、請求書や領収書の書式変更、会計ソフトの更新、従業員への説明、取引先との確認など、作業は多岐にわたる。大企業であればシステム部門や外部業者に依頼できるが、中小企業や個人商店では、経営者自身が対応しなければならない場合が多い。

 また、減税が2年間の時限措置であれば、導入時だけでなく、終了時にも同じ作業が必要になる。政策効果に比べて行政コストと民間コストが大き過ぎる。

税率を戻せず、恒久化する可能性
社会保障財源に深刻な影響が及ぶ

 第五に、これは最も大きな問題だが、減税が2年間で終わらず、長期化し社会保障の財源基盤に大きな穴が開く懸念だ。

 減税も終了時には、税率を元に戻さなければならない。そうなれば、減税終了時に「値上げ」と受け止められるだろう。消費者は負担増を感じ政治的反発が起きる。そのため、時限措置として始めたはずの減税が、恒久措置に変わってしまう可能性が高い。

 消費税減税は、始めるときには「一時的」と説明される。しかし、いったん家計がその税率に慣れてしまえば、元に戻すことは極めて難しい。政治家にとっても、税率を戻すことは「増税」と批判されるため、選挙を前にすれば先送りしたくなる。

 こうして、財源の裏付けがないまま、減税だけが長期化する危険がある。