1979年の衆議院選挙で開票状況に浮かぬ表情を見せる首相の大平正芳。大型間接税の導入に言及した大平はこの衆院選で大惨敗を喫した Photo:JIJI
「これで日本は地獄に向かう」。旧大蔵省(現財務省)で消費税導入に心血を注いだ自民党の長老は嘆きとも怒りともつかぬ声を発した。首相の高市早苗が「私の悲願」と語った飲食料品に課せられる消費税率8%をゼロにする減税案が迷走を続ける中で「税率1%案」が急浮上して一気に“本命”となっているからだ。
しかし、議論の場として設けられた高市肝いりの社会保障国民会議では意見集約がないまま“中央突破”が図られようとしている。1%案の根拠は「ゼロだとレジの調整が1年以上、1%なら半年」というシステム改修業者の意見を反映したもので、精緻な税制議論は置き去りにされている。
税は国家を支える最大の基盤だが国民に負担を強いる政策でもある。過去の政権の足取りをたどれば一目瞭然。国民に負担増を求めた政権は死屍累々といっていい。日本で最初に大型間接税(現消費税)を試みたのは大蔵省出身の元首相、大平正芳。第1次石油危機で税収減に直面した当時、蔵相だった大平は1975年度予算で、赤字国債の発行を余儀なくされた。
大平は自らの赤字国債発行について「万死に値する」と語り、首相に就任すると、大型間接税の導入に言及。ところが、この一言で79年の衆議院選挙で大惨敗。政治的ライバルで同じ大蔵省出身だった前首相の福田赳夫との間で「40日抗争」が勃発、大平は翌年の衆参同日選挙中に心筋梗塞で現職首相として急死した。
このときの蔵相が竹下登。国会対策で職人的な手腕を発揮して「大型間接税導入に関する国会決議」を取り付けた。導入までに優遇税制の是正などの段階的目標を盛り込んだ行程表を自らまとめ、一歩一歩課題をクリア。そして首相として税率3%で89年4月から日本の税制史上初の消費税導入を成し遂げた。しかし、導入直後に首相退陣に追い込まれた。以来、消費税増税に絡んで退陣に追い込まれた首相は竹下を含めて7人に及ぶ。このトラウマが歴題の首相の言動を支配した。小泉純一郎はこう言い切った。
「自分の在任中は、消費税率は引き上げない」







