国内マネーだけが踊る香港
かつて香港にマネーが集まっていたのは、優良な株式や債券、実物投資、M&Aなどへアクセスできたからである。香港は資金の通過点であり、最終目的地は「外の世界」だったのだ。
ところが、現在の香港は予見可能性が失われ、外資企業が縮小し、本来あるべき「国際的な投資」が細っている。
中国国内から集まった逃避資本は、行き場を失って、結局、域内の不動産や上場株に殺到するしかなくなっている。実需の裏づけなく資金だけが特定資産に集中すれば、それは何の経済的な裏づけのない、単なるバブル状態でしかない。
そして、この事態を招くのは、国際金融センターとしての香港を最も必要としているはずの北京政府である。合理的な政権であれば、香港の国際性を殺せば中国マネーの活用回路そのものを失うと理解し、司法の独立を実利として温存するはずだ。
だが、フィードバック機構を失い、イデオロギーが実利に優越する北京は、自らの手が香港の価値を壊しているという事実を受け入れられない。香港のバブル化は、北京による“自傷”なのである。
香港の活況に騙されるな
香港市場は今後、一時的に過熱した活況を呈する可能性がある。行き場を失った中国マネーが域内資産に滞留すれば、株価も不動産も、数字の上では跳ねうるからだ。
だが、その上昇の原因を見誤ってはならない。それは外の世界の実物価値に接続した「実体のある成長」ではなく、通路を失った資金が域内で自己完結してよどむ「見かけだけの過熱」である。避難を求めて集まった資金が、避難先で域内の株や不動産価格をつり上げる役目だけを担っているのだ。
香港の「実力」を見たければ、中国国内から集まったマネーが、投資として生かされているかどうかを検討すべきである。もし、域内でぐるぐると回っているだけであれば、それは見せかけの活況であり、いつか弾けるバブルであると判断せざるをえない。
冒頭に掲げたGFCI世界3位という数字も、480兆円という流入額も、額面どおりに受け取らないほうがいいだろう。これからの香港を読む鍵は、「どれだけマネーが集まるか」とともに、「集まったマネーを本当に生かせているのか」にある。
(評論家、翻訳家、千代田区議会議員 白川 司)







