「絶対に買わない」の嘘
ハイアールが覆した嫌悪感
すぐに結果を出すのは難しいが、何年か時間をかけていけば、他の国のようにBYDのEVへの評価は広がって、日本のEV普及率の向上にともなって、BYDの販売台数もじわじわと増えていくのではないかと思っている。
なぜそんなことが言えるのかというと「歴史の教訓」である。
我々は歴史的にも地政学的にも「中国へのネガティブ感情」を捨てきれないので、これまでも中国企業、中国製品、そして中国人を拒絶してきたという動かし難い事実がある。
その一方で我々は熱しやすく、冷めやすいという国民性もある。戦争中はあれほど「天皇陛下万歳」と叫んでいたのに、マッカーサーがやってきた途端に「民主主義万歳」と手のひら返しをするという、日和見主義的なところがある。
つまり、最初は「中国製? そんなもん買うわけないだろ」と言っていても、それはそこまで信念があってのことではないので、情勢が変わってメイド・イン・チャイナが普及して自分たちに得があるとわかると「まあ、中国製の全部が悪いわけではないからね」などと、手のひら返しで受け入れていくのである。
実際にそういうパターンだったのが、ハイアールだ。
ご存じのように、ハイアールはBYDと並ぶ中国の世界的企業。白物家電の世界トップシェアを17年間も守りつけている「家電の巨人」である。
しかし、そんなハイアールも日本の消費者に受け入れられるのには、時間がかかった。
2002年に日本進出を果たしていたのだが、長いこと「中国の家電なんてすぐ壊れて買い替えなくちゃいけないでしょ」などとディスられていた。
2008年にグローバル市場でトップシェアに輝いてからも、日本の消費者からはそっぽを向かれ続けた。そういう意味では、今のBYDと状況はよく似ている。
それはつまり、状況を打破する施策もおのずと似てくるということだ。2012年、ハイアールは三洋電機の白物家電事業を買収。三洋電機から承継したブランド「AQUA」のテレビCMに、小泉今日子さんを起用したのである。
当時はキョンキョンが主演を務めた人気ドラマ『最後から二番目の恋』がヒット。しかも歌手生活30周年の節目ということでツアーなども話題になっていた。
そんな人気者が、中国資本メーカーの「顔」を務めることで、愛国心昂る人々からは「もう応援しません」というネガティブな意見が飛び交ったのである。
おわかりだろう、今の長澤まさみさんと広瀬アリスさんに向けられている一部の“愛国バッシング”は、14年前の小泉今日子さんに向けられたもののリバイバルなのだ。







