全て外れた「中国崩壊論」
感情論で目が曇る日本人

 日本の自動車メーカーの競争力が低下しているという事実もある。トヨタの2026年3月期決算では、営業利益が2期連続で減少となり、日産自動車とホンダは巨額の最終赤字を計上している。

 このような日本勢の苦戦は、円安がどうとか中東危機がどうという以前に「中国メーカーによる急速な事業の拡大が逆風」(日本経済新聞 5月14日)になっていることが否定できない。

 しかも、その中国の脅威はこれまでは「安さ」が大きかったが「品質」も加わってきているというのは、さまざまな調査でも明らかになっている。「なぜ日本の中国依存度は再上昇したのか~HS6 桁品目の価格・非価格要因分析~」(三井住友信託銀行調査月報 2026年4月号)でも、2017年から2025年にかけて中国依存度は「リチウムイオン電池」はプラス24.7%、「自動車部品」はプラス10.7%となっている。これは価格だけではなく供給能力や製品競争力の高まりも一定数寄与している。

 2012年、ハイアールが三洋電機を買収したとき、筆者は知り合いに頼まれて、保守系論壇の方たちが「中国の脅威」について警鐘を鳴らすという愛国的なムック本の編集を手伝った。

 そこで「中国白物メーカーの台頭」について、いろんな方が語ってくれたのを誌面にしたのだが、そこでは「中国人観光客がメイドインジャパンを爆買いしているように、自国民でさえ中国メーカーの品質は不安視しているのでいずれ破滅する」とか「日本の家電メーカーは技術力だけではなく、消費者目線のアイディアやマーケティング力があるので復活する」という、中国メーカー失脚論がよく語られた。

 中には「中国経済の成長なんて共産党が捏造しているものだから、来年あたりには中国経済は崩壊して大変なことになる」と自信満々に語っておられる経済学者の方もいらっしゃった。

 あれから14年を経て、残念ながらそれらの未来予測はどれひとつも当たっていない。

 批判しているわけではなく、そういう立派な見識をお持ちで、聡明な方たちでさえ

「中国へのネガ感情」とナショナリズムで目が曇って、「こうなったらいいな」というような希望的観測で経済を語ってしまうということを言いたいのだ。我々のような一般庶民ならば、なおさらではないのか。

 日本のお家芸である軽自動車に参入したBYDが苦戦するのは間違いない。「中国へのネガティブ感情」も高まっている今、これを選択する人がいきなり増えるとは思えない。

 しかし、それがずっと続くとも思えない。我々日本人は、便利だとかこれをコスパがいいとか思えば、中国がどうとかいうこだわりはあっさりと捨てて愛用する国民性だ。実際、モバイルバッテリーの中で人気の「ANKER」や、若い女性たちが列をなしてい麻辣湯チェーン「楊國福麻辣烫」など、日本の消費者にごく自然に受け入れられている中国企業もある。

 あと何年かしたら、BYDについて質問したらこんな答えが返ってくるような社会になっているかもしれない。

「ああ、昔はよく反日だとか騒いでいる人がいるけれどやっぱ安いし、使い勝手いいし、政治は政治、いいクルマだったら、どこの国のメーカーでも関係ないんじゃない?」