――贈与ではなく遺言書で財産を承継させるケースとしては、田中さんのような事例のほかにどのような場合が考えられるでしょうか。

いちよう相続・税務サポート 代表 田澤広貴氏田澤 広貴(たざわ こうき)/税理士。いちよう相続・税務サポート代表。不動産専門税理士事務所にて、相続税申告や不動産オーナーの税務業務に従事。現在は相続税・不動産に関する税務を中心に、幅広い相談に対応している。複雑になりやすい相続・不動産の税務をわかりやすく整理し、依頼者にとって納得感のある提案を心がけている。

田澤税理士:生前贈与ではなく、遺言書による相続を選択すべきケースは、田中さんのような事例以外にも多く存在します。

 生前贈与は、特定の子どもだけに財産を渡すと、他の兄弟から「不公平だ」と不満が出やすくトラブルの火種になることがあります。

 遺言書は、被相続人の最後の思いを託す書面です。

 生前に財産を動かして周囲を刺激することなく、遺言書の中で「誰にどの財産をいくら相続させるか」を明記し、さらに他の相続人への配慮(遺留分への対策や現預金の配分)を法律的に整えておくことで、遺産分割協議の負担を大きく軽減し、争いを未然に防ぐことが期待できます。

 このほか、良かれと思って生前に収益物件やまとまった現預金を贈与してしまった結果、親自身の老後資金が不足してしまうケースもあります。

 特に医療費や介護費は、高齢になるほど予測不可能な支出となります。

 遺言なら「自分が亡くなるまでは自分の財産」として手元に維持できます。万が一、自身の介護費用などでまとまった現金が必要になれば、その土地を売却したり担保に入れたりして使うことが可能です。

 また、相続時には小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など、一定の場合に利用できる制度があります。まずはご家族やご自身にとって、どのような相続税対策が有効か専門家とともに生前からシミュレーションをすることがおすすめです。

※プライバシー保護のため、登場人物に関する情報の一部を変更しています。

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