他人や環境のせいにさせない
失敗という事実を正確に伝える
「失敗したんだけど、失敗したって思ってない人が多いんですよ。みんなそうですよ。あいつが悪いから俺は失敗したって。伸び悩んでいるんだけどね。伸び悩んでない、自分が成長してると思ってるでしょう」
「だから失敗したんじゃないかということと、伸び悩んでいるんじゃないかということを正確に伝えてあげるっていうのが一番いいんじゃないですか。それから自分が考える。それで、自分が考えてどうやって自分が立ち直るか考えてみろって」
誰かのせいにする。環境のせいにする。あるいは、伸び悩んでいるのに、自分では成長していると錯覚している。だからこそ上司がやるべきことは、慰めることではなく、失敗という事実を正確に伝えることだと柳井氏は言う。それを聞いた部下が自分でどう立ち直るかを考える。これが最も良い指導方法だというのが、柳井氏の結論である。
事実を歪(ゆが)めずに突きつけることこそが、部下の思考を強制的に起動させる装置になっている。優しさで包んで曖昧(あいまい)にした指摘は、部下に自己弁護の余地を与えてしまう。柳井氏が容赦なく事実を告げるのは、部下を追い詰めるためではなく、部下自身に「自分で考える」という回路を作らせるためなのである。
自分自身を知らないまま
挑戦するのは危うい
同じ対談の中で、柳井氏は「無謀」と「挑戦」の違いについても語っている。柳井氏は、若い社員が無茶(むちゃ)な提案をしてきた場合には、はっきりと止めると語っている。
現代経営では、「まずはやらせてみよう」という考え方がもてはやされる中で、柳井氏の言葉からはそんな浮ついたやり方は出てきそうにない。
なぜなら、柳井氏に言わせれば、ほとんどの人間は自分自身を知らないまま挑戦しようとするからだ。自分がどういう人間で、何が長所で何が短所なのか。それを知らずに立てた計画は、挑戦ではなく単なる無謀に終わる。この発言は、失敗を認めない部下への指摘と根は同じである。自分を正確に把握できていない人間は、現実を直視できず、成長の起点にすら立てない。
この姿勢の根っこには、ファーストリテイリングが企業理念として掲げる「正しさへのこだわり」がある。これは単なるコンプライアンス標語ではなく、経営のあり方から取引先との向き合い方、そして従業員一人ひとりのものの考え方にまで及ぶ、全社的な判断基準として定義されている。
柳井氏にとっての「正しさ」とは、きれいごとではなく、現場で確認できる事実に基づいた行動そのものを指す。だからこそ、部下に対しても、感情に流されず事実をそのまま伝えることが「正しい」指導だと考えているのだろう。
「成功は復讐する」の
真意とは?
さらに柳井氏は、対談の中でこう語っている。「成功は復讐をする」。







