相手への思いやりや相手との信頼関係があるか
村田先生の専門分野は「社会言語学」だ。そのフィールドワークの一環で、何十人もの市民が参加する話し合いの場を訪れ、ファシリテーターの役割を見て、気づいたことがあるという。
村田 ファシリテーターのみなさんに共通する特徴として、「人の話を積極的に聞く振る舞いがある」「話し合いを円滑に進ませるための言語的な策を持つ」といったものがありました。頻繁に頷いたり、「ご意見をありがとうございます」と必ず言い添えたり――それをご本人にフィードバックしたら、「いや、別に意識していません」と。みなさんの根底には、「話し合いを通じて、人と人がつながり、新しいアイデアが生まれるお手伝いをしたい」という思いがありました。
ファシリテーションやコミュニケーションは、小手先のテクニックで成し得るものではありません。重要なのは、相手への思いやりや相手との信頼関係があるかどうか、思いやりや信頼関係を持てるかどうか、です。「相づちは何秒に1回がよいですか?」「沈黙は何秒までが妥当ですか?」といったことを私はよく尋ねられますが、コミュニケーションに不可欠なのはそうしたことではありません。
村田先生は、近著『優しいコミュニケーション――「思いやり」の言語学』で、対話のキャッチボールで大切なのは、相手の取りやすいボールを投げること――つまり、一方的に話すのではなく、相手を思いやりながら伝えることだと著述している。聞き手に思いを馳せる姿勢がコミュニケーションでは肝心だと説く。
村田 学生に「良いプレゼンテーションはどういうもの?」と尋ねると、「聞き手を意識したプレゼンテーション」という答えが多いです。話をする相手が、たとえ100人であっても、1人であっても、聞き手に思いを馳せる――私の学部の学生は、キャンパスの外でいろいろな活動をしていますが、地域のおじいちゃんやおばあちゃんにはできるだけわかりやすい言葉で伝えるとか、子どもたちには簡単な表現を使うとか、聞き手を強く意識することを心がけています。
また、学部2年生前期の「コミュニケーション・ワークショップ演習」という授業は、話し合いをするグループとその話し合いの様子を観察するグループに分かれて行いますが、観察のグループは、たいてい、「相手の話をしっかり受け止めてから自分の意見を言うことが大切だと思いました」という感想を持ちます。
……では、「優れた聞き手」になるには、どうしたらよいのだろう?
村田 企業勤めの人は、一日の終わりに、同僚や先輩社員、上司との“その日のコミュニケーション”を振り返ってみることをお勧めします。どういうときに自分がうれしいと感じたか、嫌な気持ちになったか――それを顧みるのです。すると、「あのとき、あの人は、私の言っていることをしっかり聞いてくれた」「話を理解して褒めてくれた」というふうに、「コミュニケーションは聞き手の姿勢が大切だ」ということに気づきます。
でも、相手の話をじっくり聞くことって難しいですよね。私も、家族から、「もっと、ちゃんと話を聞いて!」と言われたりします。インタビュー番組で、ホストの人がどのような聞き方をしているか――それを見るのも参考になるかもしれません。








