悩みごとをチャッピーに相談する学生たちと……

 村田先生の研究分野のひとつである「異文化間コミュニケーション」――「異文化間」は、国や言語だけではなく、世代にも存在するという。

村田 「異文化間」は、国や言語だけではなく、「世代間」にもあることを職場の人は心得る必要があります。私は、いつの頃からか、学生に「命令形」を使わなくなりました。「これ、明日までにやっとかなあかんよ」「来週までにやってね!」と言わなくなった。「ごめん。ちょっと悪いけど、来週までにやれるかな?」。「やってね!」ではなくて、「やれるかな?」。それで、学生は、「いいっすよ」と返してきます。

 LINEでのコミュニケーションでも、命令的な表現はしません。「○○してもらったら嬉しいです」+絵文字やスタンプ。それが、昨今の学生たちには心地よいコミュニケーションのようです。「学校の先生=年長者」という感覚が、学生の意識のうえで薄れているのでしょう。そのことを理解しつつも、最近、ちょっとビックリしたことがありました。たいていの学生は、「和代先生、ご都合、どうですか?」「和代先生、これでいいですか?」というふうに、「和代先生」と言ってくるのですが、「和代さん、これでいかがでしょう?」と、ある学生がLINEに書いてきたのです。

 それから、別の学生さんに、「先生、来週は来ますか?」って言われたときに、「正しい日本語は『来られますか?』でしょう?」って返したら、「え? そうなんですか……先生は心理的に近いから『来られますか?』は失礼だと思ったんです」と。若い人たちの、「対人関係」の捉え方がずいぶん変わってきています。年長者にとっては、「無礼」と思うことも、彼らにとっては敬意の一端だったり、親近感からの表現だったりするのです。

 村田先生は、「学生から、LINEを使ってください」と言われて、LINEでのコミュニケーションを始めた。

村田 やりながら、いろいろなルールを教えてもらいました。長い文章はダメとか、「。(句点)」もダメとか。句点はプレッシャーを感じるそうです。なぜなら、若者は一文一文で送信するから。「明日、来れる?」――送信。「何時に○○で」――送信。文章が2つ以上になったら、「!」を付けます。ただし、赤色の「!」はダメ。いまの時代の日本語コミュニケーションがリアルにわかります。学生は、AIと「しゃべる」と言います。チャッピーと「しゃべる」。「昨日、チャッピーと話した」と学生が言うので、「口で?」って聞いたら、「文字での会話です」と。チャッピーを育てる感覚もあるようですね。関西弁をしゃべれるようにするとか、やさしい口調で答えてもらうようにするとか……自分に合った答え方をチャッピーに求めているのです。