ガールズグループの「カワイイ」は世界に拡がるか

 NewJeansが出現させ、ILLITが大衆化させた「無国籍なカワイイ」は、K-POP市場そのものの空気を確実に変えた。そして興味深いことに、この土壌の変化は、日本のアイドルグループにも追い風を吹かせた。

 2026年3月、日本のガールズグループCUTIE STREET(キューティーストリート)が韓国の音楽番組に出演し、代表曲『かわいいだけじゃだめですか?』を韓国語で披露して話題をさらった。日本の「カワイイ」が、今度は日本発のまま韓国へ渡りはじめている証左だろう。

 欧米市場ではK-POPが成功してきたが、ここに来てJ-POPも人気を博すようになっている。日本のアニメが世界的なブームとなり、アニメキャラクターの大きな目に小さな口という、幼さを強調した「カワイイ」の造形が、広く受容されている。

 日本のアニメを見て育った世代が、いま世界で日本流サブカル消費の中心になりつつある。

 この延長線上に、日本流の未成熟さを「カワイイ」と感じ、「萌え」て「応援する」という日本型のエンタメ消費が、少しずつ浸透してきたのだろう。

 かつてKARAは、記者会見で「竹島はどこの国の領土か」と問われ、あいまいな回答をしたことでバッシングを浴びた。だが、今の韓国の若者世代では、そうした政治的な対立を音楽やエンターテインメントに持ち込む空気は、次第に薄れつつある。日本の「カワイイ」が受け入れられる素地は、韓国側でもすでにできていたのだろう。そのぶんILLITが日韓で活躍できる裾野はすでに出来上がっていたのである。

 NewJeansからILLITへの「カワイイ」の覇権交代は、韓国ガールズグループのK-POPの枠を取り払って脱韓国化・無国籍化へと向かう先触れではないだろうか。

 その道を切り開いたのはNewJeansだった。だが、事務所との泥沼の裁判闘争の末に敗訴し、2025年末にはメンバーの一人が契約を解除されて、5人が揃うことすら難しくなった。

 切り開いた者がつまずき、後を追った者が覇権を握る。まるで政治闘争の中での「政権交代」を見ているように感じる。

(評論家、翻訳家、千代田区議会議員 白川 司)