デザインで利益を生み出す最短ルート

「デザインは万能ではない」を理解する――Takram代表・田川欣哉氏と考えるブランドにデザインを効かせる方法JUN NAKAGAWA
京都大学法学部卒業後、2000年に富士通へ入社。02年に中川政七商店に入社し、08年に十三代社長、18年に会長に就任。「日本の工芸を元気にする!」を掲げ、工芸業界初のSPA 業態を確立するとともに、経営コンサルティング・教育事業を展開。25年に会長を退任。現在は、志ある企業の共同体PARaDEや、ビジョンを起点とした経営コンサルティングを行うVISION to STRUCTUREの代表として、世の中に「いい会社」を増やす活動に取り組んでいる。「ポーター賞」「日本イノベーター大賞優秀賞」などを受賞。「カンブリア宮殿」「SWITCH」など、テレビをはじめとする多くのメディアに出演。経営・デザイン分野での講演や執筆活動を行い、著書に『経営とデザインの幸せな関係』(日経BP社)、『ビジョンとともに働くということ』(祥伝社)などがある。
Photo by まくらあさみ

 デザインが利益の源泉になることについては根拠もあります。マッキンゼー・アンド・カンパニーが2018年に発表した「The Business Value of Design」というレポートでは、約300社の上場企業を5年間にわたり追跡し、デザインへの取り組みで上位4分の1に入る企業は、売り上げの成長率で業界平均を32%、株主へのトータルリターンでは56%も上回ったと報告されています。

 ただし、この数字は自社のどこにデザインを効かせれば利益を生むのか、その経路までは教えてくれません。私は、日本の企業がこうした結果を再現するために最も筋が良いのが「デザインをブランディングに活用すること」だと考えています。

 ブランドは「顧客の選択を少しだけ自社に有利にしてくれる資産」です。私たちは、商品やサービスにお金を払うたびに、価格、品質、機能、納期、使いやすさ、口コミなど、多くの基準を頭の中で比較し、総合スコアの高いものにお金を払います。これらのパラメーターを常に底上げしてくれるのがブランドだからです。

 瞬間的な売り上げをつくろうとすれば、マーケティング施策の方が「効く」でしょう。しかし、持続的な効果を得るためには、それを何度も繰り返し、そのたびにコストをかける必要があります。一方、ブランド構築には時間がかかりますが、積み上がった分だけ、次の選択、そのまた次の選択を少しずつ有利にしてくれます。いわば、商品やサービスに「げたを履かせてくれる」のです。

 AI(人工知能)が驚くべきスピードで進化し、商品やサービスがコモディティ化するサイクルがますます短くなる中、ブランドの資産価値の重要性は増すばかり。そして、まさにここにこそ「デザインの効きどころ」があるのです。

 これはただの仮説ではありません。私が経営コンサルタントとして関わってきた多くの中小企業で、既に強い手応えと成果を得ています。大企業のビジネスにも応用できるかどうかは検証の途上ですが、幸いなことに、グッドデザイン賞の審査委員長への就任後、大企業との接点も増えました。今回、文藝春秋PLUSとダイヤモンド・オンラインをつないで展開する本企画を、その「根拠集め」の場と捉え、現実に即したデザイン活用の方法論を模索していきたいと考えています。