田川欣哉さんとの対話から見えてきた、デザイン活用のルール
では、具体的に利益を生み出すブランディングへのデザインの「効かせ方」には、どのようなルールがあるでしょうか。文藝春秋PLUS「DESIGN 3.0」で実施した、デザインファームTakram代表の田川欣哉さんとの対話を通じて、これまで感じてきたことがかなり明快に整理できました。特に重要なポイントは次の三つです。
(1)デザインには機能限界がある
デザイナーと経営者が良い関係を築くために、田川さんは「デザインは有効だが、機能限界がある」ことを双方が理解することが重要と語ってくれました。私の経験則ともぴったり合致しますが、これを明言するデザイナーは意外に少ないのです。そして、デザインならではの機能が最大限に生かせる場所こそ、私は「ブランディング」だと考えています。
(2)デザインの「2階建て構造」を理解する
田川さんは、デザイナーのスキルを「2階建て」のモデルで説明してくれました。1階に「ユーザーを理解し、試作し、検証するプロセス」があり、2階に「世界観や表現といった専門性の高い領域」が載っているというのです。この構造を踏まえれば、経営者が理解すべきは1階までで、2階は基本的に専門家であるデザイナーに任せればいい、というシンプルな運用方針が立ちます。
もちろん、任せるためには、2階で何が行われているのかを大づかみに知っておく必要はあります。逆にいえばそれだけで、弁護士や税理士に法律や財務を相談するのと同じ感覚で、デザイナーにブランド構築を相談できるようになるのです。
(3)デザインは「経営の色鉛筆」の中の一本
経営にはさまざまなツールが必要です。複雑な事業環境下で成長していくためには、かつてはシンプルな意思決定で動かせていた企業も、多様なツールを使いこなさなくてはならなくなります。田川さんはこれを、経営という絵を描くために、より多くの色鉛筆が必要になっている、と表現します。デザインだけでなく、AIを含むテクノロジーもこうした新しい色(経営ツール)の一つと考えることができるでしょう。
デザインを「ブランディングのツール」と捉え、経営者とデザイナーが役割を分担しながら、多様な経営ツールを掛け合わせてビジョンを描き、成長していく──。田川さんから頂いた示唆を受け、私の中でも改めてデザイン活用の原則が整理できました。
ちなみに、田川さんは27年秋に開設される東京大学の新教育課程「UTokyo College of Design」に構想段階から特任教授として関わっています。東大の約70年ぶりの新学部がデザインなのです。ビジネスを含む幅広い領域を横断するデザイン教育がより浸透すれば、経営にデザインという専門性を取り込むことは、もっと当たり前になっていくでしょう。
次回以降も、ゲストとの対話を手掛かりに「利益につながるブランディング」を掘り下げていきたいと思います。
(第2回に続く)







