資金繰り、経営者の独断、収益認識の疑問
不正が理由でなくても監査は止まるのか?

 不正が理由でなくても、監査は止まります。

 その典型が、検査装置メーカーのクボテックです。

 同社は8期連続で営業赤字が続き、来期以降の資金繰りの見通しが立ちませんでした。会社が存続できるのかという「継続企業の前提」に重大な疑いが生じ、具体的な資金計画も示せない。監査法人は、会社が事業を続ける前提で決算書を作ってよいのか判断できず、結論不表明としました。

 2026年6月の本決算でも、同じ理由で意見不表明に至っています。

 同じ構図は、居酒屋事業などを手がける海帆にも見られます。同社は2026年4月に取引先への債務約1億円で差押命令を受け、5月には社会保険料の未払いでも資産を差し押さえられました。

 監査法人は資金計画や資金調達の確実性について証拠を得られず、意見不表明としました。不正や会計処理の誤りが理由ではないことも明記されています。

 少なくとも、この二社の理由は不正会計ではありません。中心にあるのは、事業の行き詰まりと、資金計画の不足です。

 監査法人が確認したかったのは、「将来会社を維持できるだけの裏付けがあるのか」という点でした。十分な証拠が得られなければ、不正がなくても意見不表明になり得ることを示しています。

 経営者の独断が原因になった例もあります。

 旧・石垣食品のウェルディッシュでは、当時の社長が自らに割り当てられたストックオプション、いわば自社株を安く買う権利を行使する際、必要な算定も取締役会の承認も経ていませんでした。

 その有効性に疑問符が付き、調査委員会の調査が続くなか、監査法人は半期決算について結論を表明せず、さらに監査契約からの辞任まで申し出ています。

 収益の計上時期そのものが疑われた例もあります。

 不動産関連のレボリューションでは、孫会社が運営するファンドが、仕入れた不動産を購入価格を大きく上回る金額で買い戻す取引を繰り返していました。

 これでは、本当に売れたといえるのか。

 会計のルールに照らして処理が適切だったのか確認できず、ここでも監査法人は結論を表明しませんでした。

 粉飾、海外子会社、資金繰り、経営者の独断、収益認識――。引き金はてんでばらばらです。共通するのは、ただ一点。

 監査法人が「これでは保証できない」と判断したことだけなのです。