不適切会計の開示は、むしろ減っている
それでも「最も重い判断」が目立つのはなぜか?

 ここで、意外なデータを紹介します。

 東京商工リサーチによれば、上場企業が「不適切な会計・経理」を開示した件数は、近年むしろ減っています。

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 2025年に開示した企業は43社で、前年から3割近く減少。11年ぶりに50社を下回りました。

 不適切会計の開示は減っている。それなのに、意見・結論不表明としてこの一覧に載る会社は、2026年上半期に目立って多い。この食い違いは、何を意味するのでしょうか。

 背景の一つに、監査制度の変化があります。

 2024年4月から、四半期ごとの報告書が廃止され、半期報告書に一本化されました。同時に、期中の点検である「期中レビュー」のルールも改められ、結論不表明という判断の枠組みが制度として整理されました。

 加えて、2021年からは、監査人が特に注意した論点を報告書に書く「KAM」も導入され、見積もりや不正リスクに監査の目が一段と注がれるようになっています。

 監査法人の側にも、変化の兆しがうかがえます。

 新興企業の会計不正が相次いだことを受け、日本公認会計士協会は2026年1月、監査の信頼性を高める取り組みを公表。不正リスクを見抜く目線を強め、小規模な監査事務所の体制を見直す検討も始めています。

 東証の上場企業は2025年末で3782社と高い水準が続き、管理体制が追いつかない新興企業も少なくありません。

 不正が劇的に増えたというより、監査の目線が以前より厳しくなっている可能性があります。意見・結論不表明が2026年上半期に目立つのも、その表れの一つなのかもしれません。

投資家は「意見・結論不表明」をどう受け止めるべきか
決算書の信頼を支える、最後の砦

 意見不表明や結論不表明と聞くと、監査法人が責任から逃げたかのように感じるかもしれません。

 しかし、実際は逆です。これらはむしろ、監査法人が「分からないものを、分かったことにはしない」と踏みとどまった証でもあります。曖昧な決算に“お墨付き”を与えてしまえば、損をするのは、その数字を信じた投資家だからです。

 2026年上半期に名前が挙がった7社の事情は、粉飾あり、資金繰りあり、経営者の独断ありと、見事にばらばらでした。

 それでも一つだけ、はっきりしていることがあります。

 決算書という数字は、監査人が「保証できる」と言って初めて意味を持つ、ということです。

 その保証が出ないとき、投資家がまず確かめるべきは、株価でも業績見通しでもありません。監査法人が何を「判断できない」と言ったのか、その理由のほうだといえるかもしれません。

 そして、個人投資家として気をつけるべきこととしては、監査法人からそのような判断をされた時の経営者の対応です。

 原因究明や再発防止に真摯に取り組むのか、それとも監査人との対立だけを強調するのか。

 上場企業の矜持は今まさに厳格に試されている時です。その姿勢は企業統治の質を測る重要な材料になるでしょう。