「演じる役と似ているかどうか」はなるべく考えない

「なるべく考えないようにしています」朝ドラ主演・見上愛が役作りで徹底している意外なこと『風、薫る』第2回より 写真提供:NHK

――見上さんが俳優として、ふだんから心がけている仕事をするうえで大事にしていることはありますか。

 しっかり対話をすることです。この撮影が始まる前の会見のとき、「まず、あたたかい現場を作るところからはじめたい。そこからあたたかい作品が生まれると思います」というお話をしました。

 実際、現場に入ると、プロデューサーさんやスタッフの方、共演者の皆さんがそれぞれ、互いに寄り添いながら撮影を進めています。関わる人たちがとても多いので、ときには意見が食い違うこともあります。いい作品を作るための前向きな意見であれば、多少の相違があっても、対話で解消できるのではないかと私は思っていて。

 わからないことがあったら、ひとりで抱え込まず、すぐ監督に質問をしますし、監督から演技の提案をされたときも、自分の考えを話しながら、すり合わせていくことを意識しています。

――みんなで話し合った例があれば教えてください。

 例えば、第16週で、りんと直美(上坂樹里)の感情が爆発して「でれすけ」「でれすけ」と言い合うシーンです。ほぼ15分ワンシーンという回だったので、どういうふうに撮っていくか段取りの確認も細かくしましたし、りんと直美の信頼関係があの時点でどこまで芽生えているか、心情の確認も丁寧に話し合いました。

 これまでお互いがいつも何でも言い合っているように見えて、実は言えていなかったこと、心に秘めてしまっていたことが見えてくるシーンなので、第16週までの関係性や距離感がしっかり見えるように。ただの喧嘩や言い合いにならないように、俳優とスタッフみんなで探りながら、何度もテストやリハーサルをしました。

*このシーンのレビューは『シングルマザーが単身赴任…残される娘の「健気すぎるひと言」が切ない〈風、薫る第76回〉』 https://diamond.jp/articles/-/394433 を参照。

――第15週では、シマケン(佐野晶哉)に、りんは笑顔の面をかぶって生きていると指摘されます。それは事前に知らされていて、それまでそういう演技をしていたのでしょうか。

*このシーンのレビューは『いつも笑顔の人ほど気づけない…「笑顔という鎧」つけていませんか?〈風、薫る第74回〉』 https://diamond.jp/articles/-/394386 を参照。

 のちのちそういうセリフがあるから意識して演じるようにというような指示はなかったです。私がそれまで演じていて感じたのは、りんの行動目的は自分がどうしたいということよりも、誰かのためにということが大きく、どんなにつらいことがあっても周囲には見せないようにしているという認識でした。

 でも、それすらりんは自覚していなくて。自分では素直に行動していると思っていたけれど、直美に出会ってから、いろいろ指摘されて、じつは複雑なことを心のなかで抱えながら、出力するのはそういう笑顔や元気さだったのだと自覚するようになりました。

――りんと似ているところや、もしくは演じていく中で似てきたようなところはありますか。

 りん役に限らず、演じる役と似ているかどうかはなるべく考えないようにしています。

 自分が共感できるかというような軸で考えると、自分の生きてきた人生の軸だけになって、演じる自由度が狭まってしまったり、脚本家さんやプロデューサーさんや監督さんが考えている役の像から離れたりすることが怖いと思っていて。極力、自分と重ねて考えないようにしているんです。