100近い金融機関が
全東信と取引した背景

 全東信の倒産後、加盟店への未入金被害が数多く報道されている。だが、もうひとつの大きな被害者である金融機関との関係にも目を向ける必要がある。金融業を営む全東信にとって、資金は利益を生み出す商品そのものであり、金融機関はその供給元にあたる。そのため、2018年頃には100近い金融機関と取引関係を構築していたとされる。

全東信大阪本社ビル全東信大阪本社ビル(撮影:帝国データバンク)

 では、なぜこの時期に金融機関は全東信への融資を拡大したのだろうか。その背景には、低金利環境と地域金融機関が抱える構造的な課題があった。

 現在は金利上昇局面にあるが、当時はマイナス金利政策の最中であり、金融機関は低金利での融資を余儀なくされていた。その結果、一般企業向け融資だけでは十分な収益を確保しにくい状況が続いていた。

 一方、全東信向け融資では一般企業の数倍の金利条件を設定することができ、融資額についても「貸してくれるならいくらでも借りる」という積極的な借り入れ姿勢を示していた。そのため、全東信は低金利環境下で収益機会を提供する重要な融資先として認識されていた。

 当時を知るある信用金庫関係者は次のように振り返る。

「全東信の担当者がアポイントなしで支店を訪れ、A3用紙にまとめられた100行近い取引金融機関一覧を示して数億円単位の融資を打診してきましたよ。そうやって取引行を増やしていたのかもしれません」

 この信用金庫は融資を行わなかったが、低金利時代に金融機関にとって好条件の融資を求める全東信に対し、取引金融機関が増加したのは自然な流れだったといえる。

 また、地方の人口減少による融資先不足という問題も、全東信への融資を後押しした。

 大阪には、多くの地方金融機関が支店を展開している。地方では融資先が限られるため、大都市圏の支店には地元で集めた預金を運用する役割が求められている。一方で都市部では金融機関同士の競争が激しく、オーバーバンキング状態による金利競争も進んでいた。

 そのような状況のなか、新規開拓の手間が少なく、大口融資が見込める全東信は、多くの地方金融機関にとって魅力的な運用先として映っていた。これらの条件が重なり合い、全東信の金融機関との取引環境は形作られていった。