フェルディナント・ヤマグチ(以下、F):これはあくまでも噂なのですが、スズキ社内には「ジムニーは3ドアで完結している。5枚ドアを出すなどケシカラン」なる意見が少なからず存在した、と伺いました。実際はどうだったのですか? 5ドアのジムニーを造るに際し、社内に反対意見はあったのですか?

スズキ 商品企画本部 四輪インドB・C・Dセグメント商品統括部 チーフエンジニア 佐々木貴光さん(以下、佐):どこでそんな話を……(苦笑)。まあ反対意見がなかったと言えばウソになります。「ジムニーは3枚ドアだろう」という意見は、実際に社内にありました。

F:「5ドアなんて造ったらジムニーは終わりだ!」くらいの勢いだったと聞きましたが。

佐:そこまで強硬な話ではありませんが……反対の声は間違いなくありました。

 スズキの社内にはジムニー大好き人間がたくさんいるんです。ジムニーは、「小さく軽いこと」に意義があるクルマです。車体を伸ばして排気量の大きなエンジンを積めば大きくなるし重くなる。これまでのジムニーが持っていた良さから外れてしまう可能性がある。そこを心配する意見ですね。

F:どこにでもいるんですよね。前のほうが良い、新しいのはイカンという守旧派が。

佐:“守旧派”というのとはちょっと違うと思いますね。ジムニーは趣味で使う人も多いですが、仕事で使うプロユースが非常に多い。本当に山へ入っていく人にとっては、やはり軽さと小ささが大事なんです。ノマドはより多くの荷物を積めますし、人も乗せやすい。ただ狭い日本の林道で使うのであれば、軽のジムニーが一番だという方は実際に数多くいるんです。

スズキ 商品企画本部 四輪インドB・C・Dセグメント商品統括部 チーフエンジニア 佐々木貴光さんスズキ 商品企画本部 四輪インドB・C・Dセグメント商品統括部 チーフエンジニア 佐々木貴光さん

 何と正直なことだろう。販促用のプロモーションであれば、ここは「ノマドもジムニーに負けない走破性を誇ります」と答えるのが“筋”だろう。しかし佐々木さんは、軽ジムニーの優位性をアッサリ認めてしまった。ノマドは、ジムニーを全ての面で上回る上位モデルとして開発された訳ではない。軽ジムニーが持つ身軽さを一部手放し、その代わりに後席への乗り降りのしやすさと、家族や荷物を載せられる実用性を手に入れたクルマなのである。