上院が「異議なし」で示した対中強硬の本気度

 2026年6月16日、米上院は習近平氏を名指しで「独裁者」と非難する決議S.Res.444を採択した。

 注目すべきは、対中批判を含む決議に対し、外交や経済的影響を理由として反対する動きが目立たなかったことである。上院全員が積極的に賛同したわけではないだろうが、中国との関係を重視する立場から対中強硬論に異を唱える「親中派」が、与野党から姿を消しつつある。

 かつてアメリカ議会で対中強硬化を抑えていたのは、中国市場で利益を上げるアメリカ企業のロビー活動と、通商関係の安定を重視する民主党穏健派だった。だが、現在の中国は単なる巨大市場ではなく、技術と世界市場を奪う競争相手と見なされている。企業が対中融和を守るために政治資本を使う利益は、かなり小さくなっている。

 また、民主党側でも、安い中国製品の流入や生産拠点の中国移転によって地元の雇用が失われたといった不満が強くある。経済安全保障、労働者保護、人権、台湾問題など、理由は異なっても、共和・民主両党は対中強硬へまとまりつつある。

 対中強硬は、いまや政党を超えた常識になりつつある。

米国は中国の「体制」そのものを問題視し始めた

 S.Res.444の重要性は、習近平氏を「独裁者」と呼んだこと以上に、新型コロナウイルスの起源、フェンタニル対策、WTO加盟時の公約、台湾への軍事的圧力、南シナ海、人権侵害、宗教弾圧など、従来は別々に扱われてきた問題を一枚の文書に束ねたことにある。

 個別問題であれば、項目ごとの交渉で関係を修復できる。農産物を買い、関税を下げ、フェンタニル原料の管理を強化すれば、米国側も制裁の解除や延期で応じられる。実際、習主席もこれまではそうやって個別対応によって、対米関係が悪化することを防ごうとしてきた。

 だが、この決議では、これらの重要問題が中国政府による偶発的な政策上の失敗ではなく、習主席と中国共産党の統治そのものにあると指摘している。そのため、個別政策の修正だけでは根本的な解決にならないという見方が強まっている。

 さらに、本決議は、中国人民を中国共産党と切り分け、中国共産党の統治によって苦しんできた中国人民との連帯を表明した。これは第一期トランプ政権からのスタンスであり、アメリカ上院がこれまでのトランプ政権の態度を追認したことになる。

 中国共産党は「党への批判は中国への批判である」と主張してきた。アメリカ上院はこれを否定し、中国という国家・文明・人民と、それを支配する中国共産党は同一ではないと明確に定義したのである。

 ここで米中対立は、利益を調整する通商交渉から、統治の正統性を問うイデオロギー対立へと軸足を移した。