アメリカの対中外交がわかりにくいワケ
アメリカの対中外交のわかりにくさは、政権と議会がまったく性質の違う方針で動いていることに集約される。
トランプ政権は、中国に対してディール外交でのぞんでおり、友好的か敵対的かに常に波がある。上述したように、現在のトランプ政権は中国に対して「友好的」に進んでいる。
中国が米国産農産物を購入し、レアアースやフェンタニルで一定の譲歩を示す限り、トランプ大統領は交渉を続ける。だが、いったん「中国が約束を守らない」と確定すると、いつでも関係を反転しうることも意味する。
もう一つ、アメリカの対中外交をわかりにくくしているのが、2026年5月の米中合意の実体が曖昧なことだ。
アメリカ側は農産物の具体的な購入額やレアアース問題への対応を強調したが、中国側は農業貿易の拡大や輸出許可の審査に言及するにとどまった。事業によっては、中国市場とアメリカ市場の双方を維持することが難しくなり、戦略的な選択を迫られうるだろう。
中国側にとっても、対米関係の安定は経済運営や技術開発を進めるうえで重要な意味を持つ。そのため、中国側が関係改善の演出を通じて対米圧力の拡大を遅らせようとしていると考えられる。言い換えると、中国側もまた宥和を時間稼ぎに使っていると考えられる。
これは、中国側もまたアメリカに対して「ディール外交」を仕掛けていると言えるのである。ただし、中国側は習主席の独裁体制で、「議会」が独立的に機能していないので、アメリカのような二段構えではない。トランプ政権が一気に対中強硬に転じれば、中国側の対応はかなり遅れる可能性がある。
そう考えると、2026年5月の米中合意に実質的な中身はなく、単に現状維持を確認したに過ぎなかったことがわかる。合意内容がわかりにくかったのは、「お互いが時間稼ぎをするために、現状維持に合意する」という内容だったからである。
それに対して、議会において超党派で形成された「独裁体制」というアメリカ側の対中認識は、当面は政権が交代しても大きく揺らぐことはないだろう。輸出管理、投資規制、人権制裁、サプライチェーン再編を進める姿勢は、習体制が続く限り基調として維持される公算が大きい。
日本側は、首脳会談における両者の笑顔の具合や「トランプは言い返さなかった」といった些細な行動を重視して報じているが、それは枝葉に過ぎない。両政権が宥和を演出した一方で、議会が「新冷戦」を加速させるべく準備を整えたのだから、次に考えるべきはトランプ大統領が「いつそれをスタートさせるか」だ。







