禊は済んでいない(小林製薬本社) Photo:医薬経済社
「人の噂も七十五日」とはよく言ったもので、政治家の裏金にせよ芸能人の醜聞にせよ、時がもたらすさまざまな出来事が止むことなく上書きされていくことにより、多くの人は2ヵ月半も前のことなどに関心を寄せなくなる。それが2年半となれば当事者を除けば規制当局か一部のメディアくらいしか「その後」を追わなくなるのも無理もないことだろう。
さて小林製薬である。同社が製造販売していたサプリメント「紅麹コレステヘルプ」を巡って、腎障害を含む健康被害が相次いで報告され始めたのは24年の春だった。製造工程で意図せず混入した青カビ由来の「プベルル酸」が主因と推定されており、これまでに医療機関を受診した人は延べ3406人、サプリメントの摂取実態があった死亡者数は155人に上っている。
こうした被害の大きさを前に厚生労働省も重い腰をやっと上げ、厚生科学審議会・食品衛生監視部会は7月、従来は努力義務にとどまっていた健康被害情報の報告をサプリメントの取扱事業者すべてに「義務化」するほか、重篤な症例や短期間に複数発生したケースは自治体への報告も課すことを決めた。さらに錠剤やカプセル剤などの製造施設は、規模を問わず一律にGMP(適正製造規範)による製造管理を義務付けた。
こうしたルールの整備によって今後、同様な事故の発生や被害の拡大はある程度抑えられるものと期待したいところだが、製品事故という面と並んで小林製薬紅麹事件を構成する企業ガバナンスに関する問題のほうは、業界他社がしっかりと「他山の石」として対処するまでには残念ながら至っていないようだ。創業家が会長・社長の要職を占め、実質的に経営の最終責任まで握っていた体制が危機対応の遅れ、品質統制の甘さ、そして組織の硬直を招いたというファクトを前に、自社での類似事案の予防・対策に積極的に乗り出した会社は寡聞にして知らない。







