働き方の選択肢が増えた今
キャリアの正解が見えなくなった

 近年、メンター制度を導入する企業や組織が急速に増えています。

 これまでは「女性活躍推進」の一環として語られることが多かったメンタリングですが、今やそのニーズは全社員のエンゲージメント向上、離職防止、そして育成スピードの加速へと広がりを見せています。

 なぜ今、これほどまでに「メンター」が求められているのでしょうか。

 その背景には、私たちが直面している時代の大きな変化と、企業が抱える切実な「死活問題」が横たわっています。

 最大の要因は、私たちが生きる時代背景そのものの変化です。AIの凄まじい進化による雇用の変化、国際情勢の不安定化などを受け、先行きが不透明で見通しがまったく立たない「VUCA(ブーカ)」の時代へと突入しました。

 かつての日本では、大企業に就職すれば定年まで安泰、年功序列で順調に昇進していくのが当たり前でした。「何歳で結婚し、何歳で課長になり、何歳で家を買い、60歳で定年を迎える」といった、誰もが共有できる「伝統的なキャリアの正解」が存在し、ある程度の見通しが立っていました。

 しかし、今は違います。終身雇用神話は崩れ、会社のレールに乗っているだけでは自分の身を守れません。「このタイミングで学び直そう」「次はどうステップアップしよう」と、1人ひとりが自ら考え、動く「自律型」のキャリア観が強く求められるようになりました。

 さらに、働き方の選択肢も爆発的に増えました。副業の解禁、AIによる業務効率化と新しい産業の誕生、ジョブ型雇用の導入など、多様な働き方が可能になりました。本来、選択肢が増えるのは歓迎すべきことです。

 しかし、選択肢が無限にあるからこそ、「自分はどうありたいのか?」「本当は何を一番大切にして働きたいのか?」と自問自答し、答えを出せずに迷う人が大勢出てきているのが現状です。